注意に関わる2つのシステムとは?
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頭頂葉と注意機能の関係とは?

生きる上で私達は朝起きて夜寝るまで、生まれてから死ぬまでなにかに注意しながら生活しています。

朝起きれば、壁にかかった時計に目を向けますし、臨床現場では転倒リスクのある患者さんに目を向けます。

しかしながら注意というのはこのような意識的で能動的な注意だけでなく、はっと気づくような注意、刺激によって引き起こされるような注意というものもあります。

お腹が減っているときには窓から流れるカレーの匂いにハッとに反応してしまうかもしれませんし、リハビリ室で転びそうな患者が視界の隅に入れば、ハッとそちらの方に目を向けるかもしれません。

このように注意には能動的なものと受動的に引き起こされるものがありますが、これら2つの注意の仕組みというのはどの様になっているのでしょうか。

今日取り上げる論文はこの2つの注意について調べたものです。

実験では被験者は画面上に提示された左右いずれかの四角形に視線を向けるように指示されるのですが、

どちらの四角形が目を向けるべきか事前に手がかり刺激(図中の矢印)が示されます。

その後、少し時間をおいて標的刺激がフラッシュするのですが、

手かがりと同じ方向のものが頻繁にフラッシュしたり、あるいはしなかったりと様々な条件で被験者にこの実験を行わせ、その時の脳活動を機能的MRIを使って調べています。

結果を述べると、この実験の間、頭頂葉に活動の変化が見られ、

手がかり刺激が示されている間は、頭頂葉の中でも頭頂間溝と呼ばれる領域に活動の増加が見られるのですが、

手がかり刺激とは異なる方向に標的刺激がフラッシュした場合は、右の側頭頭頂接合部の活動が増加することが示されています。

これはつまり自分から注意を向けるような能動的な注意については頭頂間溝が関わり、

思わぬ方向が正しく、ハッと注意が向くような受動的な注意には右の側頭頭頂接合部が関わるということで

これらのことから頭頂間溝はトップダウン的注意に、

右の側頭頭頂接合部はボトムアップ的注意に関わるのではないかということが述べられています。

脳卒中で見られる半側空間無視は多くの場合、右半球損傷に起因する左方向への無視であることや、

ボトムアップ的注意、すなわち「気付き」に関わる領域が右の側頭頭頂接合部であることを考えると、

半側空間無視の本態はボトムアップ的注意にあるのかなと思いました。

参考URL:Voluntary orienting is dissociated from target detection in human posterior parietal cortex.

【要旨】

空間的な位置に基づいて視覚的な刺激に注意を向ける能力ためには頭頂葉の機能を必要とする。これに関する一つの仮説は頭頂葉は自らの興味のある場所に対して自発的に注意を向けることを調整するというものである。もう一つの仮説は頭頂葉は視覚的に注意を向けていなかった場所へ注意方向の切り替えを行う上で大事だというものである。本研究では事象関連機能的MRIにより、頭頂葉の異なる領域がこれらの異なる注意プロセスに関与していることを示す。視覚刺激が提示される前に、その方向へ注意が向けられるときにはまず頭頂間溝の活動が増加するが、右の側頭頭頂接合部は注意していなかった方向へ標的刺激を発見した場合に活動することを示す。

 

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