なぜあの人は仕事ができるのか?中央実行系と内側前頭前野の関係
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中央実行系とはなにか?

私達は日々働く生き物です。

子供を起こしたり、朝食を準備したり、書類を作ったりいろいろですが、常に外界の何かと関わり合って生きています。

しかしながら、この「働く」、言葉を変えれば「作業する」というのはどういうことでしょうか。

ごくごく簡単な作業として草刈りを考えてみましょう。

上図に草刈りするためには

①眼の前の草を見て(視覚処理)

②それをアタマの中にとどめて(短期記憶)

③適切な力で鎌を振り落とす(運動の実行)

という一連の流れが必要です。

もし雑草が目に入ってもボンヤリとしていて別のことを考えていたら、花の苗を刈ってしまうかもしれませんし、茎の細い雑草なのになにも考えず力いっぱい鎌を振り落としたら自分がけがをするかもしれません。

つまり草刈りという作業一つとっても、見て、覚えて、実行するという三拍子が必要になり、この3つが揃わないとうまくいきません。

心理学ではこの一連のシステムを中央実行系と呼んでいるのですが、脳の中でこの中央実行系はどのような仕組みに対応しているのでしょうか。

脳の中のスイッチングと内側前頭前野

今日取り上げる論文は、この中央実行系に関する脳の仕組みについて調べたものになります。

この研究では被験者に計算課題を行わせ、脳波測定と機能的MRIの同時測定を行い、計算課題を行っている時に脳がどのように活動しているか調べています。

結果を述べると

①脳波測定からは計算課題に伴い右前頭部と左頭頂部(Cluster A)、また左前頭部と右頭頂部(Cluster B)のθ波における同調活動(コヒーレンス)増大が認められた。

②同時測定を行った機能的MRIと先行研究から前者(Cluster A)は、左右の背外側前頭前野の活動変化が対応しており、視覚情報を短時間保持するワーキングメモリ機能に関連していることが考えられた。

背外側前頭前野(図中の青色、8,9,46)

③後者(Cluster B)は、右運動前野と左小脳、左角回の活動と関連していることが示された。これらの活動は実際の計算活動といった実行活動に対応していることが考えられた。

運動前野(図中premotor cortex)、角回(右図、青色部分)

④これらの調整には脳の内側に位置する内側前頭前野が関与していることが考えられた。

内側前頭前野(図中赤色)

ということが述べられています。

こういったことから中央実行系の評価については前頭ー頭頂領域のθ波での同調活動(コヒーレンス)が参考にできるのではないか、

また中央実行系の要であるワーキングメモリ/実行機能の切り替え・調整には内側前頭前野が関わっているのではないかということが述べられています。

簡単な作業であっても複雑な仕組みのもとに動いているのだなと思いました。

参考URL:Human cortical circuits for central executive function emerge by theta phase synchronization.

 

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