男児におけるテストステロン、反社会的行動、および社会的優位性:思春期発達と生物社会的相互作用
憎まれっ子世にはばかるという言葉もありますが、
小さい頃の乱暴者ほど、おとなになってから偉くなるということもあるかと思います。
男性ホルモン、テストステロンというのはヒトを社会的上昇へ向かってけしかけるような働きがあり、
それゆえ場合によっては人を攻撃的にさせるとも言われているのですが、これは果たしてどこまで本当なのでしょうか。
今日取り上げる論文は、思春期の男児を対象にテストストロンと問題行動、友人の種類、リーダーシップについて調べたものです。
結果を述べると、テストストロンが高いからと言って暴力行動が増えるわけではないのですが、
つるんでいる友人がいわゆる不良であった場合、暴力的でな問題行動(対物破壊行為など)が増えるものの、対人的な暴力行動が増えるわけではないこと、
またつるんでいる友人がいわゆる不良ではない場合、テストストロンが高いほど、リーダーシップが高くなることが示されています。
つまり置かれた社会的状況によってテストストロンが振る舞いに与える効果は違うということで、
人はやはり環境の生き物なのだなと思ったり、
不良とつるんでいるけれど、本当に悪いことまではしないようなヒトはテストストロンが高く、
大人になって環境が変われば、リーダーシップを取るように変化するのかなと思いました。
ポイント
思春期には男児はテストステロンの分泌が増加し、問題行動が増加することが知られている。
本研究では9~15歳の男児を対象に、行動障害(CD)の症状、面接、テストステロン血液測定、思春期発達のTanner分類、およびリーダーシップ行動と逸脱傾向のある友人の評価を行った。
結果、テストステロンが高い男子は、必ずしも暴力行動が見られるわけではないこと、また逸脱傾向のある友人がいる場合には、身体暴力的ではない問題行動が増え、逸脱傾向がない友人がいる場合にはリーダーシップと関係していることが示された。
昔、学会の発表でシカゴに行った時、何かの手違いであまり治安の良くないエリアに宿をとってしまったことがあった。
サウスサイドといわれるところで、ギャングスタを輩出したスラム街を興味本位でタクシーを借りて覗いてみたり、
その後、シカゴのサウスサイドで育った青年のサバイバルな日常を本で読んだりした。
その本によると、たしかに日常が北斗の拳の色彩を帯びているものの、まっとうな生活を営んでいるコミュニティもあるわけで、
自分がギャングにならず、大学まで行けたのは親が絶対に悪い子とはつきあわせなかった、その一つに尽きるということが書かれてあった。
朱に交われば赤くなる、孟母三遷の教えでもないけれど、
子供の環境というのは良くも悪くも大事なんだろう。
子供がつきあう相手を選ぶというのは親のエゴなんだろうか。
社会の分離や排除を促しているのは、親の子に対する愛情や心配なのだろうかと考えると、やはり人間というのは業が深い生き物なのだなと思います。