集団的知性:「強いグループ」が持つ特徴とは?
三人寄れば文殊の知恵という言葉もありますが、私達人間は協力し合うことで一人ひとりがバラバラにやっていたのではできないような大きな事ができたりします。
それゆえ、人は様々なグループを作っていろんな事業に当たることが多いのですが、
ヒトが集まれば必ずパフォーマンスが上がるというわけでもなく、
いわゆるだめなチーム、だめな職場もあれば、難しいプロジェクトをしっかりやってのけるすぐれたチームまで様々です。
こういったチームの持つ問題解決能力を示す概念として集団的知性というものがあります。
これは個人の頭の良さを示す一般的知性の概念から派生したものです。
頭の良い人というのは、何をさせても大概良い成績を収めるのですが、これと同じようにすぐれたチームというのは何をやっても良い成績を収める、こういったチームの持つ本源的な能力を示す指標が集団的知性になるのですが、
果たしてこの集団的知性に影響を与える要因というのはどのようなものなのでしょうか。
今日取り上げる論文は、この集団的知性について実証的な研究を行ったものです。
この研究では2人から5人の数多くのチームに様々な課題を行わせ、その結果をもとにチームの持つ集団的知性を割り出しているのですが、
チームメンバーが持つ特性とチームの集団的知性の相関をとったところ、関係があるのは
・チームメンバーの社会的感受性の高さ
・チームメンバーの発言機会の平等性
・チームメンバーに女性が多いこと
の3点があげられています。
社会的感受性は目を見て表情を読み取るテストである “Reading the Mind in the Eyes” testをで評価しており
チームメンバーの発言機会の平等性というのは、言い換えれば発言が誰か少数の人間に独占される状態が低いということなのですが、
こういった性質を持ったチームというのは集団的知性が高い、いわば問題解決能力が高いチームであることが示されています。
また女性の割合が多いほど集団的知性が高いというのは、女性が平均して社会的感受性が強いことと関係していることが述べられています。
また個人の知能の高さも集団的知性に関係していないこともないのですが、その関係性は上記の3要因よりも低いことも示されています。
チームを作るにあたっては個人が持つ知性よりも社会性を優先したほうがチームパフォーマンスが上がるということもあるのかなと思ったり、あるいはリーダー不在のリーダーシップという言葉もありますが、
チームのパフォーマンスを上げるためにあえてリーダーは静かに控えるということも時には大事なのかなと思いました。
参考URL:Evidence for a collective intelligence factor in the performance of human groups.
【要旨】
心理学者は、「一般的知性」と呼ばれることが多い単一の統計的要因が、さまざまな認知課題に対する人々のパフォーマンスの相関から生じることを繰り返し示してきた。 しかし、似たような「集団的知性」が人々の集団に存在するかどうかを体系的に調べたものはいない。 2人から5人のグループで作業している699人を対象とした2件の研究では、さまざまなタスクに対するグループのパフォーマンスを説明する一般的な集合知能率の収束した証拠が見つかった。 この「cファクタ」は、グループメンバーの平均的または最大の個人の知能とは強く相関していないが、グループメンバーの平均的な社会的感受性、会話交代の分布の平等、およびグループ内の女性の割合と相関している。
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