「認識を補助する注意のダイナミクスに対する情動の影響」
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ヒトの頭というのは一度に多くのことを同時には処理できないようです。

聖徳太子は10人の話をいっぺんに聞き取れたという話がありますが、こんなことができる人はごくごくまれでしょう。

聖徳太子でもないけれど、聞き取ったり、見たり、わかったりすること、こういったことは知覚とか認識とか言われます。

これはいったいどういう仕組みでなされているのでしょうか。

個人的な印象ですが、これはビーカーの中の化学現象と似ているのではないかと思います。

むかし学校の理科の実験でやったと思うのですが、ビーカーの中にホウ酸だとか何かを入れて結晶を析出するようなのがあったのではないかと思います。

こんな感じのあれです。

脳をビーカーの中に入った水か何かの溶媒だと考えましょう。

そして無数の光や音からなる外部刺激をホウ酸かマンガンかだと考えてみましょう。

すこし時間を置くとホウ酸やマンガンが少しずつ結晶になって水の中に析出されるように、脳の中に入った外部情報も少しずつ、すこしずつ何らかの結晶のように、意識、認識として形になってきます。

いっぺんにできるわけではない。少しずつ少しずつ結晶として析出されてくる。

ホウ酸やマンガンが一気に析出されないように、目や耳を通して頭に入った情報は少しずつ、少しずつ何かの形として析出されて意識に上がってくる。

その過程で「ああ、これは机だ」「ああ、これはリンゴだ」という風に認識されてくる。

少しずつであって、いっぺんに全てを認識することはできない。

普通の人がいっぺんに多くの情報を処理しきれないのはこんな感じなのではないのかなあと考えています。

ただ理科の実験のように、何かの触媒を放り込めば、析出までのスピードは上がるかもしれない。

今日取り上げる論文はヒトの脳では何がこの触媒になりうるかについて調べたものです。

結論を述べると、覚醒状態を上げるような刺激が触媒になりうる、つまり認識速度を向上させることが示されています。

【要旨】

「連続して提示される視覚刺激の中から特別な刺激を二つ検出する課題があるが、このような実験では一つ目の刺激に注意を向けることによって二つ目の刺激を認識しづらくなることがある。この現象は注意の瞬きとして知られている。しかしこの注意の瞬きは情動的な言語刺激を提示すると減弱することが知られている。今回様々な設定で実験を行い、この注意の瞬きの減弱効果について検証した。実験の結果から、情動的な刺激が覚醒状態を高めることで情報処理が促進され、注意の瞬きが減弱することが考えられた。」

参考URL:Affective influences on the attentional dynamics supporting awareness.

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コメント

夜遅く眠い中本を読んでいるとなかなか読み進まない。これは覚醒状態が落ちて、目に入る光情報が文字情報として認識される速度が遅くなっているからだろうか。

コーヒーなんかを飲んで目が覚めれば、情報処理も速くなって論文読んだり本を読むのも速くなる。

買い物が好きな人はバーゲン会場に行くとテンションが上がって、超高速で商品の選別ができるようになるかもしれない。

そう考えると認識機能と覚醒状態というのはやはり関係があるのかなと思います。

リハビリでも患者さんの気を引くような課題設定して覚醒あげてっていうのは大事なんだろうなと思います。

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