視覚におけるトップダウン処理とボトムアップ処理
朝起きてから夜寝るまで私達はいろんなものを見て過ごします。
それはどうでもよい広告だったり、今読んでいるこの記事の文字だったりしますが、この視覚認識というのはどのような仕組みでなりたっているのでしょうか。
様々な研究からこの視覚認識にはトップダウン的なものとボトムアップ的なものがあることが報告されています。
トップダウン的なものとは、自分から何かを探しに行くような視覚処理で、駅前で待ち合わせた人を探すようなときの視覚認識になります。
またボトムアップ的なものとは、急に蛇や大蜘蛛、セクシーな異性が現れたときには無意識に目に飛び込んでくるようなものを指し、別名、刺激駆動型の視覚認識とも呼ばれます。
このトップダウンとボトムアップそれぞれに対応した脳活動があることが報告されていますが、今日取り上げる論文は、トップダウン的な視覚処理が具体的にどのようなものかを示したものになります。
トップダウン的視覚情報処理:前頭眼野→頭頂間溝→高次視覚野
一般に視覚情報処理には2つの太い経路があるとされています。
一つは目に見えるものがどこにあるのかという空間的な認識を処理する背側視覚経路(黄緑)、
もう一つは目に見えるものがなんであるかという意味的な認識に関わる腹側視覚経路(紫)になります。
今日取り上げる研究では、視覚認識課題を行わせながら機能的MRIを用いて脳活動を測定し、トップダウン的な注意が働いている時に視覚処理に関わる脳領域がどのような関係しあっているかについて調べています。
対象になった脳領域は、眼球運動に関わるとされている前頭眼野、様々な情報の統合に関わる高次の認知領域である頭頂間溝、さらに意味処理に関わる腹側視覚経路の高次の領域であるV4(4次視覚野)、VP(3次視覚野腹側領域)、低次視覚領域であるV1(1次視覚野)、V2(2次視覚野)になります。
結果を述べると、トップダウン的な視覚認識においては
前頭眼野(FEF)→頭頂間溝→腹側経路高次領域(V4・VP)
の関係性があり、
この関係性が高いほど課題の正答率も高いことが示されています。
脳損傷や発達障害で意図的に注意を向けることが苦手な例がありますが、こういった現象は上記の経路のどこかがスムーズに繋がっていないことも関係しているのかなと思いました。
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