自閉症スペクトラム障害とコミュニケーション能力
ヒトというのは良くも悪くもつるむ生き物です。
一人でいると脳が寂しさを感じ、誰かとつながらずにはいられない生き物で、
つながった結果としてそこに社会が生まれ、ルールが生まれ、人間関係が生じてしまうのですが、
自閉症スペクトラム障害では社会やルール、人間関係を取られるのが不得手なためおのずと生きることが大変になってきます。
しかしながら自閉症スペクトラム障害にみられるコミュニケーションの問題はどのように捉えることができるのでしょうか。
今日取り上げる論文は、自閉症スペクトラム障害にみられるコミュニケーション能力について多面的に捉えるための評価方法について検討したものです。
この論文によるとコミュニケーションを行うために必要な能力は以下の図に示すように多岐にわたっており
非常に数多くの社会的シグナルをうまく処理することで円滑なコミュニケーションが可能となります。
従来の自閉症スペクトラム障害におけるコミュニケーション研究ではこれらの社会的シグナルの一部のみが取り上げられており、自閉症スペクトラム障害者のコミュニケーションを理解するうえで十分でなかったこと、
また研究結果を臨床診断や対話型ロボットの開発など幅広い分野に応用するためには、やはり上記の様々な社会的シグナルに関する能力を評価する方法が必要ではないかということが述べられています。
コミュニケーションというのは随分マルチモーダルで多層的なものだと思ったり、
またこれを機会に実装させようとすると随分大変そうだなと思いました。
【要旨】
本稿の目的は、自閉症スペクトラム障害を持つ子供たちのマルチモーダルな社会的 – 感情的行動を研究するための我々の独自のそして学際的なアプローチを提示することである。 私たちの目標は、人間の相互作用に関わる社会的シグナルの受信と生成に関する基礎的で応用的な研究を行うことである。 この目的を達成するために、我々は、幼児期の認知的およびマルチモーダル感情的統合(例えば、聴覚、視覚、姿勢)を理解およびモデル化し、自閉症スペクトラム障害などの社会的相互作用の動態に影響を及ぼす病理における機能障害を分析することを試みる。 具体的には、我々はマルチモーダルな社会的 – 感情的信号(スピーチ、韻律、顔、姿勢)およびコミュニケーションのダイナミクス(例えば、同調性、関与性)の特徴付けを研究する。 適用分野は、鑑別診断の向上、対話型ロボット工学、自閉症スペクトラム障害を持つ人々とその介護者の支援、および精神病理学における客観化である。