
サイエンスメディア、Lab BRAINS様へ寄稿しました。興味の軽方はどうぞ!
はじめに
初めて手術を受けたときのことを、今でもよく覚えている。
想像していたよりも、ずっとつらかった。
とくにきつかったのは、手術当日の夜だった。
麻酔が切れ、病棟が静まり返るころになると、痛みが少しずつ前に出てくる。右を向いても痛む。左を向いても痛む。仰向けになれば腰が悲鳴を上げる。どの姿勢をとっても、「これなら楽だ」と思える場所がない。
あとから振り返ると、つらさの中心にあったのは、痛みそのものではなかった。
「逃げ場がない」「自分ではどうにもできない」。その感覚が、苦しさを何倍にも膨らませていたのだと思う。いつまで続くのか分からないことも、不安を強めていた。
では、このとき感じていた「苦しみ」とは、いったい何だったのだろうか。
痛みが強いから苦しいのか。それとも、苦しみには別の成り立ちがあるのか。
この問いを手がかりに、本稿では、脳科学と心理学の視点から「苦しみ」という体験を整理してみたい。







