離断症候群としての半側空間無視
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半側空間無視とは?

脳卒中になると手や足が麻痺して動かなくなったり、様々な症状が現れます。

しかしながら脳卒中の症状というのはこのように目に見えてわかりやすいものだけではなく、いわゆる「普通」のことができなくなる様々な症状があり、これらは高次脳機能障害と呼ばれています。

具体的には麻痺がないにもかかわらず洋服を着ることができなくなってしまったり、怒りや欲求を抑えるのが難しくなってしまったり、言葉を聞いたり話したりすることができなくなったりなど様々ですが、

その中の一つに片側の空間がどうなっているのか気づきにくくなる症状として半側空間無視というものがあります。

多くの場合左側の空間に気づかない症状として現れることが多いのですが、生活上の具体例として左側だけを食べ残してしまう、歩いていても左側の障害物に気づかずぶつかってしまう、左側から声をかけても気づかないなどといったものがあります。

こういった症状があると、麻痺の程度が軽くても日常生活を送る上で様々な危険があり、自宅で生活することが難しくなることが多いのですが、こういった症状の背景にはどのような脳機能の障害が関係しているのでしょうか。

離断症候群とは?

脳というのは神経細胞の塊になるのですが、脳のすべてが神経細胞本体だけでできているわけではありません。

神経細胞はその情報を伝えるために長い神経線維を出しており、脳の中はこういった神経細胞の束が走っています。

上図参考URL:

こういった繊維は断面を見ると白色であることから大脳白質もしくは白質繊維と呼ばれているのですが、神経細胞本体が障害されなくても、この白質繊維が障害され、神経細胞同士の連絡が断ち切られることで、様々な高次脳機能障害が生じることが知られています。

こういった症状は離断症候群とも呼ばれているのですが、はたして半側空間無視ではどのような神経線維に障害が生じてしまうのでしょうか。

半側空間無視と離断症候群

今日取り上げる論文は、この半側空間無視と神経線維の傷害の関係について述べた総説論文になります。

様々な知見が述べられているのですが、その中のものをいくつか紹介すると

  • 半側空間無視では頭頂葉と前頭葉もしくは側頭葉を結ぶ神経線維が障害されることで生じる。
  • その中でも重要な神経繊維としては上縦束(下図左:SLF II,III)と下縦束(下図右:ILF)である。
  • これらの領域で結ばれている右半球の下頭頂小葉、上側頭回後部、下前頭回、中前頭回、前頭弁蓋部というのは新奇な刺激に注意を向ける一つのシステムになっている。
  • 半側空間無視の病態の中核にはこれらのシステムが機能せず、適切に注意を切り替えられないところにある。

ということが述べられています。

電車でも幹線となる部分が不通になることで、広い範囲に障害が生じることがありますが、脳の中でも情報処理の幹線が部分的に障害されることで脳の様々な機能が障害されることがあるのかなと思いました。

参考URL:Left unilateral neglect as a disconnection syndrome.

 

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