志向性と脳科学:前頭眼野と頭頂間溝の役割とは?
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志向性とはなにか?

私達はココロを持った生き物です。

しかしながらこのココロ、言い換えれば意識というのはどのようなものなのでしょうか。

お腹が減ったと思うのもあなたのココロですし、明日の予定を立てるのもあなたのココロ、素敵な異性に目が向いてしまうのもあなたのココロですが、これらに共通したものが一つあります。

これは、あなたのココロというのは必ずどこかを向いているという点です。その方向は空腹感かもしれませんし、明日の予定かもしれませんが、何を意識するにしろ、必ずその意識はどこかを向いています。

こういった意識の性質は哲学的には志向性という言葉で語られますが、この志向性に対応した脳活動というものはあるのでしょうか。

志向性に関わる脳領域とは?

今日取り上げる論文は、何かをする際の意識に関わるの活動について調べたものです。

実験では被験者に画面上の右側もしくは左側に示された*印に反応する課題を行わせるのですが、その反応の仕方をそれぞれ

・*印に対して注意を向けるだけの課題

・*印に対して視線を向ける課題

・*印に対して指差しする課題

の三種類を行わせ、

その中でも指差し課題については右手で指差す課題と左手で指差す課題の2パターンで課題を行わせ、その時の脳活動について機能的MRIを使って調べています。

また*印が出る数秒前に、画面上の左右どちらかに◇印が一瞬示され、被験者はこれを手がかりとすることもできます(◇印の後、高確率で同じ側に*印が出るもののかならず出るとは限らない)。

この実験では実際に注意を向けたり視線を向けたり、指差ししたりする前に、つまり行為の直前の準備段階において脳がどのような活動をしているのかについて調べているのですが、

結果を述べると

・課題の種類にかかわらず、行為の準備段階において左半球の前頭眼野と頭頂間溝の活動が高まっていた。

・指差し課題においては前頭眼野と頭頂間溝に加えて動作の複雑さを反映するように前頭葉の広範な領域が賦活されていた。

ことが示されています。

ではこの前頭眼野と頭頂間溝というのはどのような領域なのでしょうか。

前頭眼野と頭頂間溝の役割

前頭眼野というのは前頭葉にあって、基本的な機能は目を動かすことになります。

この前頭眼野の働きがあるからこそ私達はスマートフォンで示される文章の字面を追ったり、素敵な異性を目で追いかけることができます。

また頭頂間溝というのは頭頂葉を横切るように走っている溝なのですが、主な役割は感覚と運動を協調させることと考えられています。

私達が靴下を履いたり、少し窮屈な靴に足を上手にグイグイ入れるときには感覚と運動を協調させる必要がありますが、こういった場面で必要になる領域ということになります。

このように一般的には前頭眼野は目を動かす、頭頂間溝は運動と感覚を協調させると考えられてきたのですが、

この実験からは動作の遂行場面ではなく、動作の準備である場面、つまり何かに意識を向けようとする時に活動することが示されています。

脳にはいろんな機能がありますが、「気を向ける」、あるいは「意識を方向づける」ということに関わる脳領域もあるのだなあと思ったり、

あるいはこの領域が損傷すると意識の方向付けに何らかの障害が生じることもあるのかなあと思いました。

参考URL:Functional organization of human intraparietal and frontal cortex for attending, looking, and pointing.

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