自閉症スペクトラム障害児は左半球が過度に活動?
自閉症スペクトラム障害というのは症状は多彩であり非常に個体差が大きいものですが、果たしてこの症状特有の脳活動というものはあるのでしょうか。
今日取り上げる論文は、自閉症スペクトラム障害時を対象に認知機能が定型発達児と比べてどの程度異なるのか、
また記憶課題を行っている時、脳波の違いはどのようなものなのかについて調べています。
脳波については記憶機能との関連が強いとされるシータ波について頭皮上に設置された電極間の関係性を調べています。
結果を述べると記憶機能に関係する課題で自閉症スペクトラム障害では有意に低い成績を示し、また脳波については左前頭部ー左頭頂部および左前頭部ー右頭頂部の連結性が高ければ高いほど記憶機能が低くなることが示されています。
ある部分とある部分の連結性が高ければ、直感的には機能が高くなりそうな気がしますが、そうならなかった理由として筆者らは脳機能における逆U字形の関係があるのではないかと述べています。
これはつまり連結性が適度に高ければ機能も高くなるものの、連結性が高くなりすぎるとかえって機能が低下するというもので
薬で言えば適用量があり、度を超して飲んだ場合かえって逆効果になるように
自閉症スペクトラム障害においても過剰な左前頭部からの連結性は記憶機能を低下させるのではないかということが述べられています。
脳をうまい具合に使うというのは難しいのかなと思いました。
【要旨】
本研究はASDの子供たちの記憶能力と皮質の接続性を調べ、これらの子供たちによって示された記憶障害が皮質の接続性と関連しているかどうかを調査した。 5〜14歳のASDの小児21人および正常な発達(NC)の小児21人がこの研究に参加した。各子供には、非言語知能テスト(TONI-III)、数字スパンテスト(DS)、レイ – オステリート複雑図形検査(レイ-O)、香港リスト学習テスト(HKLLT)を含む神経心理学的バッテリーを行わせた。また対象の認識における視覚情報読み込み課題(OR)を行っている時に脳波測定を行った。テストバッテリーからの6つの神経心理学的測定値とシータバンドにおける6つのEEGコヒーレンス測定値について、ASDの子供たちと正常な子供たちの間で比較を行った。結果は、ASDの小児はDSおよびRey-Oでは正常な小児と同等のレベルで機能だったが、HKLLTおよびORでは有意に劣っていたことを示した。それらはまた、左半球を含む前 – 後結合(左前方 – 左後方;左前方 – 右後方)において有意に上昇した長距離コヒーレンスを示した。ピアソン相関は、前後のEEGコヒーレンスと記憶能力の間に有意な負の関連を示した。
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