経頭蓋磁気刺激とは何か?
脳というのはブヨブヨしたあまり気味のよくない臓器ですが、基本的には電気信号のやり取りで動く仕組みになっています。
昔中学校で電磁誘導というのをやったと思うのですが、
原理的には特定の磁場を作ることで二次的に脳の電気活動に影響を与えることができるはずであり、
この原理を応用したものに経頭蓋磁気刺激というものがあります。
この経頭蓋磁気刺激はうつ病や統合失調症の治療に使われることがあるのですが、果たして脳卒中、その中でも認知機能の障害として現れやすい半側空間無視に対して治療効果はあるのでしょうか。
半側空間無視に対する経頭蓋磁気刺激治療
今日取り上げる論文は、右半球損傷により左半側空間無視を示した患者3名に対し経頭蓋磁気刺激治療を行った効果を検証したものになります。
治療対象となった患者は、それぞれ46歳、52歳(共に発症3ヶ月)、67歳(発症5ヶ月)なのですが、この患者らに対して2週間、確実のスケジュールで1Hzの磁気刺激を頭頂葉領域に相当する部位に対して900発与え、治療の前後で空間認知機能の変化を見ています。
ちなみに以下のグラフの1が治療2週前、2が治療開始時、3が治療終了時、4が治療終了2週後なのですが
グラフに見えるように2週間で大きな変化(0に近いほど左半側空間無視症状が少ない)が見られ、それが2週後においても継続していたことが示されています。
また時計描画課題も行っているのですが、これでも同じく改善効果が見られることが示されています。
脳卒中のリハビリテーションでは運動や認知課題を介して脳に影響を与えることで変化を促しますが、
変化を促すという点では脳にダイレクトに働きかけるというのもありなんだろうなと思いました。