ヒト頭頂皮質における空間的更新
私達の目はじっといるわけではありません。
たとえあなたが見ている視野がそれほど変わらなく、同じ画像を見ていると思っているとしても、
その実あなたの眼球はごく短時間のうちに、右や左、上や下というようにビュンビュン移動しては留まり、またどこかへビュンビュン移動しては留まりというように高速移動と停止を繰り返しています。
こういった眼球運動はサッケードと呼ばれていますが、不思議なことに私達が感じる視野というのはカメラをブンブン振り回したときの視野とは違って落ち着いています。
カメラ(眼球)はブンブン動いているのに画像は静止しているというこの奇妙な現象は果たしてどのような仕組みのよって支えられているのでしょうか。
今日取り上げる論文は、この現象について詳しく調べたものです。
実験では被験者にコンピュータディスプレイ上に示される刺激を様々な設定で認知させているのですが、
眼球運動を促すような設定では、右頭頂葉、なかんずく頭頂間溝のあたりが安定した視覚認識に関わっているのではないかということが述べられています。
視覚的意識というのは随分良くできているなあと思いました。
参考URL :Spatial Updating in Human Parietal Cortex
ポイント
サル頭頂皮質の単一ニューロンは、眼球運動と関連して視覚情報を更新するが、刺激表現のこの再マッピングは、空間的不変性に寄与すると考えられる。
本研究では、同様の過程がヒト頭頂皮質で起こり、機能的MRIで可視化できるという仮説を立て実験を行った。
結果、視覚情報の更新がヒト頭頂皮質で起こることを実証した。
補足コメント
40も半ばに差し掛かってきたのか、思うように体が動かないことが多い。
動きたいのに動けない。
こんなときは、人間というのは肉体という牢獄に閉じ込められた囚人なのかなと思ったりもする。
肉体という牢獄と言う意味では、元気な人もそうでない人も案外一緒かもしれない。
プラトンのたとえ話で、洞窟の中で炎に照らされた自分の影しか認識できない男の話がある。
つまり肉体という牢獄に閉じ込められた人間は決して、真実を認識できず、目にするものは真実の影でしかないというものなのだが、
そこまで小難しい話をしなくても、私達の知覚系は全てを認識できるわけではなく、
あくまで認識しているのは物理的世界を一定の幅でモデル化したものに過ぎない。
人が見る世界やコウモリが見る世界は自ずと違い、盲人象を撫でるという点ではおそらく50歩100歩なのだろう。
科学の方法論というのは、どこまでヒトの身体を超えることができるのかなとおもったりです。