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異なる基準フレームにおける視空間処理の神経基盤:半側空間無視からのエビデンス

私達の視覚認識というのは随分複雑にできていて一様ではありません。

一般に何かを見る時には自己中心(自分を中心として右か左か、上か下か)座標、

あるいは対象中心(視覚対象を中心として右か左か、上か下か)座標があると考えられており、

これは電車に乗っていて、隣の電車ががたんと動き出すとあたかも自分が乗っている電車が動いたように錯覚するのは、これは視覚が対象中心座標になっているような例でイメージが付くかと思います。

半側空間無視でも自己中心性の半側空間無視では自分の左側が認知できないのに対し、

対象中心性無視では対象物の左側が認知できないといった違いにもつながることが報告されています。

またこれとは別に脳の視覚処理経路には大きく分けて2つあり、

一つは背側視覚経路と呼ばれる視覚野から頭頂葉へ抜ける空間処理や対象物に対する運動につなげるような経路と

もう一つの腹側視覚経路と呼ばれる視覚野から側頭葉に抜ける意味情報処理に関わる経路があることが知られています。

今日取り上げる論文は、急性期の右半球損傷患者を対象に半側空間無視症状の種類(自己中心/対象中心)と脳血流について詳しく調べたものです。

結果を述べると、半側空間無視症状の中でも自己中心性の無視を示すものは背側視覚経路に機能不全が生じており、

対象中心性の無視を示すものは腹側視覚経路に機能不全が生じていることが示されています。

自己中心性が背側視覚経路というのは、この経路が対象物に対する自己の運動というものに関係するからかなと思いました。

参考URL :Neural Substrates of Visuospatial Processing in Distinct Reference Frames: Evidence from Unilateral Spatial Neglect

ポイント

ヒトの視覚認識において自己中心座標、刺激中心座標、物体中心座標という異なる基準フレームがあることが考えられている。

本研究では右テント上虚血性脳卒中後48時間以内の被験者171例に一連の試験を行い、基準フレームと脳灌流画像の関係について調査を行った。

結果、右縁上回を含む背側視覚経路の一部が自己中心座標の空間的符号化に関与し、腹側視覚経路の一部が対象中心性座標の符号化に関与することが示された。

 

補足コメント

実家を離れて家族を持って、育ててもらった親には申し訳ないなと思って、ときに触れて孫(自分の子供)の動画などを撮っては送っている。

長男も小学校へ上がり、被写体であることに飽いたのか、自らスマートフォンを回して家の中の様子を動画に撮る。

撮れた動画を眺めてみると、息子の興味のあるものが画面の中央に居座ったり、飛んだり落ち着きがない。

つまり一歩引いたアングルから全体を捉えるのではなく、自己中心座標だけで世界を認識しているような感じがある。

視覚処理は、自己中心座標、刺激中心座標、物体中心座標の順で徐々に高次の脳領域によって担われていくということも書いてあったが、その意味では一歩引いて全体を見るというところはまだ成熟していないのかなと思ったりです。

先日は近所の路面電車の会社が主催する写生大会に付き合っていったのですが、

この絵を見る限り、自己中心座標を抜けて刺激中心座標でモノを見たのかなと思いました。

 

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