入院リハビリテーションにおける患者の脳卒中後の反対側へのプッシャー症状を改善するための立位フレームの有用性
脳卒中では様々な症状が現れますが、体軸が傾き上手に座ったり立ったりできない症状があります。
こういった症状はプッシャー症候群とも呼ばれることがありますが、これに対する有効な治療法というのはどのようなものなのでしょうか。
今日取り上げる論文は、プッシャー症候群を示す患者に対し、図のような器械を用いて立位保持時間を確保した場合どのような変化が起こるかについて検討した症例検討になります。
この機械を使うことでプッシャー症候群があっても立位を保持することができるのですが、
亜急性期病棟で一ヶ月入院している間、
理学療法を1015分行い、そのうち380分をこの機械を使って立位保持させる練習を行わせています。
ただこのまま立っているだけだと大変なので、実際はレクリエーションの参加時なども合わせて行っていたのですが、
結果としてこの練習を行ったこの症例ではプッシャー症候群の改善幅が平均よりも大きかったことが示されています。
プッシャー症候群には体性感覚へのアプローチが有効という話も聞きますが
やはり一定の刺激量というのは大事なのかなと思いました。
ポイント
プッシャー症候群の治療として機械を用いた立位保持練習を行った。
対象となった患者は回復期病棟に入院した右前頭頭頂出血による左不全麻痺で注意障害のある58歳の男性。
一ヶ月の入院中、380分の立位保持練習を行ったところ平均的なプッシャー症候群を有する患者より回復が良好であった。
補足コメント
とはいうものの、他のランダム化比較試験ではこのような立位保持練習の効果は否定されている、というか、他の治療法と比べてとりわけ効果があるということは否定されはいる。
とはいえ平均の誤謬という言葉もある。
その昔、ドイツや日本と戦っていたアメリカ空軍は、墜落事故の改善のために完璧なデータを集めていた。
すべてのパイロットの体格を完璧に把握し、もっとも平均的なデータを取得、
完璧に平均的な体型に合わせたコクピットを開発したが墜落件数は減ることがない。
これを解決するためにどうしたかというと、すべてのパイロットはすべて体型が違うという当たり前の前提をもとに座席位置などを調整できるシステムが開発された。
平均を離れ、個人にアジャストすることで墜落事故は劇的に減少したという。
なんのことはない、今の自動車の標準装備になっている座席調整のアジャスタブルシステムだ。
平均は大事だと思うけれども、平均的な人間は実際どこにもいない。
商売にしても、医療職にしても、カスタマイズできるところにその存在価値があるのかなと思いました。
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上記は「平均思考は捨てなさい」からです。
価値観を広げるのに役に立つかもです。