重みと尺度:無視症状における線分二等分法の新しい見方
半側空間無視の評価で頻繁に用いられる評価方法として線分二等分課題というものがあります。
これは患者に水平線を見せ、その真中を指示される方法ですが、スクリーニングには便利なものの、様々な研究から患者の反応のばらつきが大きく一定しないことが示されています。
しかしながらなぜ患者は線分の左側を正確に認知できないのでしょうか。
これに答える一つの仮説が、半側空間無視の症状により、左側が「見えていない」というものです。
左側が見えていないので、それゆえ正中線が右側へ偏ってしまうという解釈です。
もう一つは、半側空間無視の症状により知覚が歪んでしまうというものです。
これはすなわち歪んだガラスを通して見るように、左側の長さが縮められて知覚されるというものです。
今日取り上げる論文は、この半側空間無視による線分二等分課題の結果が、様々な設定でどのように変わってくるかについて調べたものです。
実験では左右の長さや患者の正中に対するポジションを変えて、様々な設定で患者に二等分課題を行っているのですが、
どれだけ左側の情報が重視されているかという重み付け尺度で評価すると、
やはり半側空間無視患者は全体として左側の情報が十分に重み付けられていないことが示されています。
知覚の歪みという概念は興味深いなと思いました。
参考URL :Weights and measures: a new look at bisection behaviour in neglect.
ポイント
水平二等分線課題は半側空間無視の評価に使われるが、その反応は患者によって様々である。
半側空間無視患者では左方向の長さがより短く認知されるという近くの歪みがあると考える。
左右の長さや身体中央に対する場所を変えて様々な設定で行う課題からは、半側空間無視は全体的に左側の情報の重み付けが右側に比べ小さいことが示された。
コメント
半側空間無視の知覚の歪みを他人事のように思ったりするが、
多分私達人間は多かれ少なかれ、「色眼鏡で見る」という言葉のように、何かしらの歪みなしに認知できないのかなと思ったり、
あるいはマーケティングというのは認知を歪ませる手法なのかなとひねて思ったりもします。
とはいえ、進化の歴史や身の回りの動物植物を見ると、上図に擬態して相手の認知を歪ませられる生物ほど生存能力が高いのもまた確かで、
これら動物植物の末裔であるヒトも生き延びるために擬態を行い、相手の認知を歪ませるのはやむを得ないのかなと思ったりです。
カメレオンやエリマキトカゲと違って、生き延びるための仮想敵が同じ種であるヒトだという違いはありますが。
地球上の生存競争から自由になりたいなと思ったりです(-_-;)