アスペルガー症候群では睡眠時の脳波はどのように異なっているのか?
概念というのは時代とともに変わっていくものですが、現在自閉症スペクトラム障害という名前で統一される前の名称として
アスペルガー症候群というものがありました。
これは自閉症的傾向を持つ中でも知能が比較的高いものを指していたのですが、いわゆるこのアスペルガー症候群では睡眠時の脳波というのはどのような特徴を持っているのでしょうか。
今日取り上げる論文は、アスペルガー症候群の青少年を対象に睡眠時、とりわけ比較的眠りの浅いノンレム睡眠時に脳波がどのような特徴を持っているかについて調べたものです。
実験では18名のアスペルガー症候群の青少年と14名の対照健常群(年齢範囲:7.5〜21.5歳)を対象にノンレム睡眠時の脳波を測定し、頭皮の様々な場所に貼り付けた電極の間でどのような関係性があるかについて調べています。
結果を述べると、脳波の強さを示す指標は全体的にアスペルガー症候群では前頭部が低くなっていること、
また前頭部の電極と頭頂部の電極の関係性がアスペルガー症候群では低いことが示されており、
これらの結果は一般にアスペルガー症候群では実行機能が低下していること、
さらに機能解剖学的背景としては、実行機能を司るネットワークである背外側前頭前野と頭頂葉との連結性が低下しているという先行研究を支持する結果になったことが述べられています。
睡眠時は安静度が高く、小児の脳波を取るためには有効なのかなと思いました。
【要旨】
目的:ノンレム睡眠は、通常発育中の小児および青年と比較してアスペルガー症候群(AS)は異なっている。睡眠のマクロ構造の関わりとノンレム睡眠中のEEGパワースペクトル密度およびコヒーレンスも異なっている。
方法:一夜適応のために実験室で睡眠を行った後、18人のASと対照群の14人の被験者(年齢範囲:7.5〜21.5歳)からEEG睡眠パラメータを得た。スペクトルおよび位相コヒーレンスの尺度は、NREM睡眠中の複数の周波数帯について計算された。
結果:睡眠時のパワーおよび入眠後の睡眠はASで増加した。絶対パワースペクトル密度(PSD)は、アルファ帯域、シグマ帯域、ベータ帯域、ガンマ帯域において、ASにおいて有意に減少を示した。半球内コヒーレンス測定尺度に示されている相対PSDは、前部領域ではASの方が低く、すべてのEEGチャネルで右半球でより低いことが示された。連関性の最も顕著な減少は、デルタ、シータ、アルファおよびシグマEEG周波数帯の前部中央部で認められた。
結論:特に前頭皮質派生におけるNREM睡眠中のEEGパワースペクトルおよびコヒーレンスは、典型的に発達している小児および青年と比較してASにおいて異なる。
意義:ノンレム睡眠中の脳波の定量分析は、ASの前頭機能不全の仮説を支持するものである。
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