集団的知性:仕事のできるチームの構成は認知科学的にどうあるべきか?
人間関係というのは料理にも似て組み合わせが大事です。
1+1が2以上になるのが理想ですが、組み合わせ次第では1になったり0になったり仕事におけるチームの相性、組み合わせというのは難しい。
しかしながらどのようなチーム構成がいわゆる「できるチーム」になりうるのでしょうか。
今日取り上げる論文は、視覚認識特性がチームパフォーマンスにどのような影響を与えるかについて調べたものです。
視覚認識にかかわる脳科学文献をあたっていると必ず当たるのは背側経路と腹側経路と呼ばれるものです。
これは網膜から一次視覚野に入った情報は途中で二手に分かれ、
頭頂葉に向かう背側経路(図中緑)では目の前のコップや飛んでくるボールが空間上のどこにあるのかという空間情報の処理がなされ、
側頭葉に向かう腹側経路(図中紫)では、目の前のコップやボールが一体何かという意味情報の処理がなされることが知られています。
ある心理学研究によると、視覚的認知において空間情報の処理が優れた人もいれば、その逆に意味情報処理が優れた人がいること、
また科学者は往々に空間情報処理に優れ、芸術家はその逆に意味情報処理に優れるという話もあります。
この研究ではチームにおいて空間情報処理が優れた人が多い場合と意味情報処理に優れた人が多い場合、チームパフォーマンスがどう変わってくるかについて調べているのですが、
結果を述べると空間情報処が優れた人が多いチームというのは、課題を行う前に、どのように課題を進めるのか、どこに気を付けて進めるのかと十分考えてから進めるという、いわば「段取り力」が高いこと、
さらにこの段取り力の高いチームというのは課題におけるミスも少なくなること、
つまり空間情報処理が高いタイプ(科学者タイプ)が多い→しっかり段取りをして仕事をする→チームパフォーマンスが高くなる
という図式があるのではないかということが述べられています。
しかしながら業務というのは決められたタスクを行うだけでなく、業務そのものを再定義したり、あるいはぬか床をかき混ぜるように組織をかき回したりする人、なにかを新たに創造する人など様々な人がいることで全体最適になるわけで、
かならずしも科学者タイプが多ければパフォーマンスが上がるとは言い切れないのではないかと思うのですが、どうなんでしょう。
【要旨】
本研究では、実行課題のエラーに影響を与えるチームプロセスに対するメンバーの認知スタイルの影響について調査を行った。 実験室で行った二つの研究で、チームの構成(物品視覚と空間視覚に関連するメンバーの認知スタイル)がチームの戦略的焦点と戦略的合意にどのように影響するか、そしてそれらがチームのミスにどのように影響するかを調査した。 第一調査では70組のペアチームがナビゲーション課題と識別課題を実行して行われたが、空間視覚の高いチームは、物品視覚の高いチームよりもプロセスを重視していることが確認された。 課題を実行する際の具体的なプロセスへ十分な注意が払われることとエラーの減少との間に関連がみられた。 64のチームが建築作業を行って行われた研究2では、認知スタイルの異質性は、エラーとの直接的で仲介的な関係を持つ戦略的合意の形成に否定的に関連していることが示された。