テストステロンは攻撃性だけではない?
男性ホルモンで有名なものにテストステロンというものがあります。
これはしばしば攻撃的な性格、もしくは犯罪とも関係するホルモンと考えられることがありますが、このテストステロンというのは本当に攻撃性に関係するだけのものなのでしょうか。
今日取り上げる論文は、テストステロンの働きについて研究された論文を取りまとめた総説論文になります。
テストステロンの投与で行動がどのように変わるか調べた研究は、動物やヒトを対象にしたものでいろいろとあるそうですが、テストステロンの増加で変わるものとして以下の4つが明らかにされています。
・自分の脅威となるような対象により警戒するようになる
・報酬を求める行動が活発化する
・恐怖反応が減弱する
・ストレスに対するレジリエンス(回復性)が高まる
これらの行動学的研究の結果をまとめて考えると、テストステロンの本質的な役割とは、単に個体を攻撃的にするだけではなく、
社会的地位を求め、それを維持しようとする働きではないかということが述べられています。
テストステロンは筋力トレーニングで増えやすいとも言われているのですが、
経営者や権力者がマッチョな雰囲気なことが多いことと何かしら関係があるのかなと思いました。
参考URL:The role of testosterone in social interaction.
動物の研究者は数十年前に「社会的ホルモン」としてテストステロンの役割を確立しましたが、人間の社会的行動に対するその因果的影響の調査は最近になって始まったばかりである。 本稿では、動物と人間の社会的相互作用に対するテストステロンの因果的影響を示す最近の研究を概説し、議論し、これらの影響の根底にあると思われる基本的な神経生物学的メカニズムについて概説する。 これらの最近の発見に基づいて、我々は人間の社会的行動におけるテストステロンの役割は社会的地位の探求と維持の観点から最もよく理解されるという仮説を提示する。
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