自閉症スペクトラム障害における「見る」ことの困難
自閉症スペクトラム障害というのは、様々な特徴がありますが、その中の一つに「見ることの困難」というものがあります。
小さい子を育てていると「ちゃんと見なさい!」だとか「ちゃんと見てるの?」ということが多いと思うのですが、
自閉症スペクトラム障害では、この「見る」というところに困難があり、
それは相手の顔を見れなかったり
場の空気を見れなかったり、
注意すべきところを見れなかったり
色いろいろなのですが、多くの場合、情報の入口である「見る」というところに困難を抱えています。
「見る」脳としての後頭葉
この「見る」という機能ですが、脳の中でこれを担当するのは主に後頭葉になります。
目から入った視覚情報は多くの場合、この後頭葉が入口になって脳の他の領域に情報が送られ、他人の表情や物のある場所など、いろんなことを認知できるようになります。
また格闘技や交通事故などで後頭部を強く打ち、後頭葉が損傷されると皮質盲と呼ばれる症状を示し、
眼球に問題がなくても見ることができないという症状をきたすことがあります。
自閉症スペクトラム障害と後頭葉の活動の関係
今日取り上げる論文は、自閉症スペクトラム障害児と健常児20名ずつを対象に安静時の脳波測定を行い、その特徴について調べたものです。
脳波についてはその強さや、電極間のつながりなどを詳しく調べており、様々な結果が示さているのですが、
その中の一つに自閉症スペクトラム障害児では後頭葉にあたる部分の脳波(デルタ、シータ、ガンマ帯域)が減弱していることが示されています。
この現象の背景として、自閉症スペクトラム障害特有の「見ることの困難」が関係しているのではないかということが仮説的に述べられています。
視覚情報処理というのはコミュニケーションや日々の実務を行う上でやはり大事なんだろうなと思いました。
参考URL:EEG power and coherence in autistic spectrum disorder.