半側空間無視の解剖
半側空間無視の責任領域については様々な議論があるようです。
ある人は上側頭回が大事だと述べ、
あるいは右の下前頭回が大事だという人もおり、
もっとも言及されているのは下頭頂小葉だったりするのですが、
いったい本当のところ、どこが最も大事なのでしょうか。
今日取り上げる論文は、右半球損傷で半側空間無視を生じた患者を対象にその損傷領域を詳しく調べたものです
結果を述べると、下頭頂小葉の角回がもっとも重要であり、さらに側頭葉内側の海馬傍回も重要であることが示されています。
このような結果を示した背景として、海馬傍回は頭頂皮質と密接な神経連絡経路を持っており、空間ナビゲーションに重要な役割を果たすからではないかということが仮説的に述べられています。
視覚認知は本当に複雑にできているのだなと思いました。
参考URL :The anatomy of visual neglect.
ポイント
半側空間無視に影響を与える領域を調べる目的で右半球損傷患者35名の損傷領域について調査した。
従来上側頭回が重要と言われていたが、もっとも重要な領域として下頭頂小葉の角回であり、さらに内側側頭葉の海馬傍回が示された。
補足コメント
人工知能の発達と脳の研究はお互いの知見をお互いに活かし合って相補的に進んできたと言われているが、
どこが半側空間無視で大事なのかをはっきりさせるためには、一度似たようなシステムを実装した何かを作ればわかるんじゃないかと思ったりするのですが
しかしながら人間の視覚的「意識」をどのように再現するのか、
あるいは他者の意識などわかるはずがないという行動主義の文脈にのっとって、実際に半側空間無視をシステムに生じさせ、その時の振る舞いを観察して判断すればいいのかなどと考えました。
私達が確信できるのは自分の意識だけであり、他者の意識は本当のところわかるはずもなく、
表情や姿勢、行動といった外的情報から勝手に他人の意識を類推していますが、
私達は本質的に皆、他人と関わるに当たり生まれつきの行動主義者なのかなと思いました。