性格は脳のどこにあるのか?ビッグファイブと脳科学で読み解く
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はじめに

人の性格は脳のどこで作られているのか。
「ここが外向性の場所だ」「あそこが誠実性の中心だ」といった単純な話ではない。
しかし、近年の脳科学の研究から、性格と脳にはつながりがあることが少しずつ見えてきている。

その鍵となるのがビッグファイブ理論である。
これは性格を5つの特性で表す方法だ。

  • 外向性:人と関わることを好むかどうか

  • 神経症傾向:不安や心配を感じやすいかどうか

  • 開放性:新しいことや変化を受け入れやすいかどうか

  • 協調性:他人に優しくできるかどうか

  • 誠実性:計画性や責任感があるかどうか

このモデルは世界中で再現性が高く、文化や言語が違っても似た傾向が確認されている。

脳の形と性格

MRI(脳の構造を写す検査)を使った研究では、性格ごとに関連しやすい脳の場所が報告されている。
たとえば外向性が高い人は、喜びや報酬を感じる眼窩前頭皮質が大きいことがある。

神経症傾向が高い人は、不安や恐怖を感じる扁桃体や、感情と判断をつなぐ前部帯状皮質が大きいことがある。

協調性は、人の気持ちを読み取る側頭頭頂接合部との関連が、誠実性は計画や衝動を抑える前頭前野との関連が指摘されている。

ただし、最新の大規模なレビュー(Chen & Canli, 2022)では「研究結果は一貫しておらず、決定的な証拠はない」とされている。

つまり、こうした脳と性格の対応関係は仮説の段階であり、今後の検証が必要である。

脳の動きと性格

脳の形だけでなく、動き方にも性格の違いが見られる。

外向性が高い人は、報酬を予想したり手に入れたりするときに、中脳ドーパミン系(報酬に反応する回路)が強く活動する。これは「ごほうびに敏感」な脳の特徴だが、初期の研究は人数が少なく、再現性の確認が続いている。

神経症傾向が高い人は、脅威を感じる映像や音に対して扁桃体が過敏に反応する。この反応の強さは中くらいの大きさの差として統計的に示されている。

また、扁桃体と前頭前野のつながり方の違いが、感情のコントロールのしやすさに影響している可能性がある。

協調性は、他人の意図や気持ちを推測する課題で側頭頭頂接合部(TPJ)がよく働くことと関連するが、この結果はすべての研究で一致していない。

誠実性は、脳の前方にある前頭前野という部分の働きと関係している。

前頭前野は、物事の優先順位を決め、やるべきことに集中し、途中で気をそらさないようにする役割を持つ。誠実性が高い人は、この前頭前野の中でも、計画を立てる領域と注意を切り替える領域がうまく連携しており、そのおかげで目標に沿った行動を続けやすいと考えられている。

脳の化学と性格

脳の中で情報を伝える物質(神経伝達物質)も性格と関係している。

神経症傾向が高い人は、セロトニン1A受容体の結合が低いことがある。セロトニンは気分の安定に関わる。

また、新奇追求傾向(外向性と関係が深い)が高い人は、中脳のドーパミンD2受容体の結合可能性が低いことが報告されている。

ただし、これらの影響は小さく、性格は多くの遺伝子や環境要因が組み合わさってできると考えられている。

性格は脳回路のバランスで決まる

現在の知見から見ると、性格は脳の一か所にあるわけではない。
むしろ、複数の脳回路の働きのバランスで決まると考えられる。

  • 外向性=報酬を求める回路の感度

  • 神経症傾向=危険を察知する回路の敏感さ

  • 誠実性=前頭前野内の計画・注意切替の連携効率

  • 協調性=社会的な情報を処理する回路の成熟度

外向的な人も、心配性な人も、こうした回路の感度やつながり方の違いが背景にある。

まとめ

脳と性格の関係は、興味深い関連が数多く報告されてきたが、再現性や因果関係はまだはっきりしていない。

性格は一つの脳の場所に収まるものではなく、複数の回路の調和によって形づくられている。

脳科学の進展は、性格を「固定された性質」としてではなく、経験や環境によって変化しうるものとしてとらえ直すきっかけになるだろう。この視点は、教育やメンタルケア、さらには職業適性の理解にまで広がる可能性がある。

性格という人間らしさの核心を、脳というもう一つの宇宙の探究から読み解く試みは、まだ始まったばかりである。

参考文献

  • Chen, Y.-W., & Canli, T. (2022). “Nothing to see here”: No structural brain differences as a function of the Big Five personality traits from a systematic review and meta-analysis. Personality Neuroscience, 5, e8. https://doi.org/10.1017/pen.2021.5
  • DeYoung, C. G., Hirsh, J. B., Shane, M. S., Papademetris, X., Rajeevan, N., & Gray, J. R. (2010). Testing predictions from personality neuroscience: Brain structure and the Big Five. Psychological Science, 21(6), 820–828. https://doi.org/10.1177/0956797610370159
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  • Riccelli, R., Toschi, N., Nigro, S., Terracciano, A., & Passamonti, L. (2017). Surface-based morphometry reveals the neuroanatomical basis of the five-factor model of personality. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 12(4), 671–684. https://doi.org/10.1093/scan/nsw175
  • Rueter, A. R., Abram, S. V., MacDonald III, A. W., Rustichini, A., & DeYoung, C. G. (2018). The goal priority network as a neural substrate of Conscientiousness. Human Brain Mapping, 39(9), 3574–3585. https://doi.org/10.1002/hbm.24195
  • Zald, D. H., Cowan, R. L., Riccardi, P., Baldwin, R. M., Ansari, M. S., Li, R., … & Kessler, R. M. (2008). Midbrain dopamine receptor availability is inversely associated with novelty-seeking traits in humans. Journal of Neuroscience, 28(53), 14372–14378. https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.2423-08.2008
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