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なぜあのチームは強いのか?自立的なチームとは?
初めて就職した会社は飲食業の会社だったのですが、そこの店長は常々「店長の仕事は仕事をしないこと」といっていました。
これは本当に仕事をしないということではなく、店長がいなくてもお店が回るようにするための仕事をするのが仕事という意味合いだったと思うのですが、
確かに飲食業に限らず、できるチームというのは確かに自立的で上司の指示がなくても自ら問題を発見、解決、伝達できるような組織だと思うのですが、
このようなチームを作るためにはどのようなことが必要なのでしょうか。
またこのようなチームというのは具体的にどのような構造になっているのでしょうか。
自立的なチームの構造とマネジメントの範囲
同じ業務を行っているはずなのに、上司がいつも走り回っているような組織もあれば、ゆったりと構えているような組織もあり、前者はいつも部下が仕事をしてくれないとこぼしていそうですが、この2つの組織の違いはどのようにしめすことができるのでしょうか。
今日取り上げる論文は、チームマネジメントについて述べた総説論文ですが、この筆者はチームの効率性を次のようなダイアグラムで示しています。
暇な人は自分が所属しているチームに何があって、何が欠けているのかを見てみるとおもしろいと思います。
これはまずチームが仕事を行うに当たり、基盤になるものが2つあり、
一つは業務の文脈的な基盤となる報酬システム、教育システム、情報システムであり、
もう一つはグループのデザインとも言えるもので、どのような仕事をするのか、グループのメンバーがだれか、グループの規範はなにかという点になります。
さらに仕事を効率的に行うためにはシナジーというものや無駄の排除というものも大事になってきます。
シナジーというのはチームで仕事を行うことで相乗効果が生じて、1+1が2ではなくて3や4になるようなものですが、このような相乗効果が生じやすい環境というもの大事になってきますし、
また根回しが必要だったり、過度に保守的で慣習依存的な組織というのは同じタスクを進めるにしても必要以上に労力がかかってしまいます。それゆえ仕事を進める上での無駄がないということもチームの仕事を効率化するために大事なってきます。
これらの前提があった上で効率性を決定する要因として挙げられるものとして
・仕事に対して投入された労力
・仕事を行う上で必要な知識と技術
・仕事を行う上での適切な方略
があります。
平たく言うと正しい方法で十分な知識と技術でしっかり頑張ることが仕事を効率化するために大事なってきます。
またこれらのプロセスを加速・強化するためには必要な備品がしっかりとあることが大事になります。
こういった諸々の条件があって、仕事の効率化が図られるのですが、その効率化というのは単にどれだけ生産できたかというアウトプットだけで図られるものではありません。
仕事というのは一回きりではなく、繰り返し繰り返し様々な課題が立ち上がってはそれを解決していく永続的はプロセスであり、それゆえメンバーのチームに対する感情や結果に対する反省というものも大事になってきます。
具体的には仕事の結果を可視化できることや、仕事を通じてメンバーのつながりが強くなること、さらにメンバーの気持ちとチーム全体の気持ちがシンクロして、チームの成功で喜び、チームに失敗で悲しむというところが大事になります。
それではこのようなチームを作るためにはマネージャーはどのようにすればいいのでしょうか。
マネージャーの権限とチームの権限
マネージャーがどこまで仕事をするか、どこまで管理を行うかというのは上司であれば少なからず考えるとおもうのですが、これをマトリックスとして図示したものが以下になります。
これは図のとおりなのですが、まず第一段階ではマネージャーは直接的な仕事以外の全てを管理しなければいけません。
すなわちきちんと仕事をしているかの進捗管理、どんなチームをどのように作るかというチームの設計、さらに報酬・教育・情報システムの管理という仕事のバックグラウンドの整備の全てを行う必要があります。
第二段階では仕事の進捗管理はメンバーが自分でできるようになるので、マネージャーの仕事はチームの設計と仕事のバックグラウンドづくりだけになり、
さらに第三段階になると、誰とどんな仕事をどんなふうにするかというチームの設計も自発的にやってくれるようになるのでマネージャーの仕事は、業務のバックグラウンドの整備だけで良くなります。
マネージャーの権限委託はどのように進めていけばいいのか?
このようにチームメンバーが自発的に仕事に関わるあれこれをやってくれればマネージャーも楽ちんなのでしょうが、一朝一夕にはこのように行きません。
それではどのような順序をたどれば、このような理想的なチームが出来上がるのでしょうか。
この論文によるとまず第一段階では
・なすべき仕事がどのようなものなのかを分析し
・チームを作るためのコスト計算を行い、
・どの段階までマネジメントを行うか決める
ことを行います。
すべての業務が自発的に行えればそれでいいというわけではなく、仕事によってはきっちり管理したほうがうまくて安くあがることもあるでしょうし、その逆もあるでしょう。
第一段階ではそういった見極めをまず行わなければいけません。
第二段階ではチームの下地づくりを行います。
これはすなわち
・チームで行うべき業務を決め
・メンバーを選んで
・報酬システムや教育システム、情報システムをメンバーに提示し
・適切な物品を与えることを行います。
第三段階ではチームの自立性を促します。
具体的には
・チームが行う業務の範囲を決めて
・行うべき業務がどのようなものなのかを状況によってはメンバー自らに再定義させることを促し
・チームの規範やメンバーそれぞれの役割が出来上がるように援助する
というものになります。
ここまで出来上がるとチームというのは自発的に動き始めますので
第四段階では自発的なチームが動きやすいように支援します。
具体的には仕事を通じてメンバー間で相乗作用がおこりやすいように支援したり、チームが経験から学べるように支援したりします。
つまりどこまでチームに自立的に動いてもらうかを考えた上で、マネージャーは段階的に手を引き、状況に応じて支援することで自立的なチームが効率的に仕事をできるように促していきます。
うまくいっているチームもあればそうでないチームもあると思うのですが、
どれだけ上図に立ち上げて、どれだけ上手に手を引いて、どれだけ上図に手を入れられるかのセンスがマネージャーにとって大事なのかなと思ったり、
マネージャーが頑張りすぎてチームが上手く回らないということもあるのかなと思ったり、
リーダーシップ不在のリーダーシップというのは理想という言葉も聞きますが、おれがおれがというあまりに外交的な性格は自立的なチーム作りには必ずしもプラスにならない場面も出てくるんだろうなと思いますがどうなんでしょう。
参考URL:The design of work team