男性ホルモン テストステロンと金融市場の関係とは?
テストステロンというのは男性ホルモンの一種で、個体を成功、報酬、社会的地位のアップなどを目指して頑張らせるような働きがあるのですが、これは男性ホルモンと言われるだけあって男性には女性の10倍以上のテストステロンが分泌されているそうです。
このテストステロンですが、マッチョな男がひしめく金融市場ではどのような役割を果たしているのでしょうか。
今日取り上げる論文は、テストステロンが金融取引でどのような役割を果たしているかについて調べたものです。
この論文によるとテストステロンはリスクを取る行動を促す役割があり、
リスクを取って成功すると、さらにテストステロンが分泌されるという働きがあることが述べられています。
つまり勝者は勝つことでテストステロンが分泌され、さらなる高みを目指し続け、このような営みがあるからこそ男性社会というのは強者が支配する階級制の縦社会になるのではないか、
また勝者は勝つことでより高いリスクを賭けて戦い、いつかはその高くなりすぎたリスク故に滅びてしまうのではないかということが述べられています。
この研究ではプロのトレーダー17名を対象にテストステロンの値と運用実績の関係について調べているのですが、
その日の運用実績が年間平均よりも高い日というのはテストステロンの値が高く、
また相場の先が読めないような荒れた状況ではストレスホルモンであるコルチゾールの値が高くなることが示されています。
総じてトレーダーは相場が上昇傾向にあるときはテストステロンの値も高くなり、リスク選好性も高まること
また相場が下落傾向にあるときはコルチゾールの値が高くなり、リスク回避性が高まること、
これらの内分泌による行動変化が金融市場におけるバブルとクライシスを作り上げているのではないかということが仮説的に述べられています。
男が作る世界というのは波風があって大変だなと思いました。
参考URL:From molecule to market: steroid hormones and financial risk-taking
【要旨】
財務的な意思決定に内分泌システムがどのような役割を果たしているかについてはについてはほとんどわかっていない。 本研究では、ステロイドホルモンとその認知効果についての調査を行い、金融市場におけるトレーダーパフォーマンスへの潜在的な関係について調査する。 予備研究の結果は、コルチゾールがリスクを、テストステロンが報酬をコードすることを示唆していた。 この内分泌研究における重要な発見は、ホルモンに対する急性曝露と慢性曝露の異なる認知効果である。急性に上昇したステロイドは、さまざまな課題に対するパフォーマンスを最適化する可能性がある。 しかし慢性的に高められたステロイドは不合理な危険報酬の選択を促進する可能性がある。 我々は、市場のバブルとクラッシュの間に観察された非合理的な活気と悲観論がステロイドホルモンによって仲介されるかもしれないことを示唆する仮説を提示する。 ホルモンが市場の動きを誇張することができれば、おそらくトレーダーと資産運用会社の間の年齢と性の構成は金融市場で目撃された不安定性のレベルに影響を与えるかもしれない。
コメント
昔、資産運用の勉強を始めた頃、いくつか金融市場を舞台にした小説を読んだ。
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そこで描かれる男たちはどうにも荒くれていて男性ホルモン満載な感じだったが、トレーダーの世界では35歳限界説というのがあるらしい。
35歳をすぎるとパフォーマンスが落ちるというものなのだが、今日取り上げた論文もなんだか現場あがりの人が書いたのか現場の匂いがプンプンするような論文で、トレーダーのパフォーマンスには注意力と運動神経のようなものが必要という下りもある。
また本文に書いてあるようにコルチゾールというのはリスク回避性を高めるのだが、長期のストレスで慢性的にコルチゾールが高い状況が続くと脳が変化し、認知機能が落ちるというようなことも書いてある。
35歳限界説というのは若い内は男性ホルモンの値が高く、それゆえパフォーマンスも上がるのかと思ったり、あるいはトレーダーとして経験を積み、脳が慢性的にコルチゾールにさらされると年をとって適切な判断ができなくなるのかと思ったりしました。
かくいう私はいくらか痛い目をみた後、高配当株と世界分散のETFを半々ずつ毎月積立てるというあんまり男らしくない運用に落ち着きました。
人には人にあった生き方というのもあるんだろうなと思います。
直接関係はないのですが、以下の著者の本が好きでよく読みます。お金のこと以外にも人生の選択において結構な勉強になります。