集団的知性:変化に強い組織とはどのような組織なのか?
「強い組織が生き延びるのではない、変化できる組織が生き延びるのだ」
というのはビジネス書を開けば必ず出てくるようなフレーズではあるのですが、
仕事をしていると環境がガラリと変わり従来のやり方が通用しなくなるときというのが必ずきます。
小手先の変化だけでなく根本的な変化が求められた場合、それに適応できる組織とできない組織がありますが、この2つの組織の違いというのはどのようなものなのでしょうか。
今日取り上げる論文は、チームの適応能力に影響を与える要因について実験課題を用いて調べたものです。
実験では大学生を対象に3名で一組のチームを64チーム作り、そのそれぞれに3時間からなる意思決定課題をさせるのですが、
その途中でメンバー間のコミュニケーションがうまくいかないように環境を変えた場合、それぞれのチームがどのように環境の変化に対応できるか、また適応能力に影響を与える認知・性格的な因子について調べたものです。
結果を述べると、意外なことに高いパフォーマンスを求めるイケイケのチームというのは低いパフォーマンスで満足する地味なチームよりも変化への適応能力が低いこと、
さらにもっとも変化へに適応能力が高いチームというのは学習意欲が高いチームであったことが示されています。
このような違いは変化が小さい場合には目立たないようですが、変化が大きい時には顕著になるようで
平常時に高いパフォーマンスを連発するような組織が急激な業界の変化に耐えられず衰退していくのはパフォーマンス至上主義があるためかなと思ったり、
高パフォーマンス志向の外交的な人間ばかりの組織よりも、適度に内向的な人間を含んだ組織というのが危急時には適応能力が高いのかなと思いました。
【要旨】
3人ずつで構成された64のチームを対象に3時間からなる意思決定課題を行わせ、その時間半ばでメンバー間のコミュニケーションチャンネルを阻害した場合、チームが効率的に活動できるために、どのように適応するかについて調査を行った。従来の研究と同様にチームメンバーの認知機能は適応能力と正の相関を示した。またゴール設定を難しく、かつチームメンバーが高いパフォーマンスを望む性質であった場合、変化への適応は低下していた。またゴール設定を難しく、かつメンバーが高い学習指向性を持っていた場合、変化への適応は良好であった。補足的な解析から、ゴール設定とメンバーのゴールへの姿勢が、メンバー間の関係性や関係性の変化、意思決定などチームの適応についての要因を予測しうることが示唆された。