右視床病変後に見られた自己中心イメージに限局した半側空間無視の症例
半側空間無視というのは多くの場合、右半球損傷で頻繁に起こり、左側の視覚的認知機能が低下する病態ですが、
よく示されるエピソードに実際に見ているものだけでなく、想像上のイメージにおいても半側の視空間の情報がカットされるというものがあります。
今日取り上げる論文は、このような従来の知見とは異なり、実際に見ている場面では半側空間無視がないのにも関わらず、
何かをイメージさせた場合に限って半側空間無視が現れる症例を紹介したものです。
報告されているのは86歳の右利き男性で右視床に限局した損傷により構音障害と中等度の左片麻痺を呈した患者なのですが、
彼に長年住んでいたジュネーブの地勢を、ある特定の視点(代表的な建築物のドアに向かって、もしくは背にして)から述べさせると、
左側の情報が抜け落ちてしまうこと、
しかしながら特定の視点なしに一般的に地勢の概略を観光客に伝えるように述べさせると、左側の情報は抜け落ちないこと、
さらに半側空間無視を検出する臨床検査では無視症状が見られないことが示されています。
こういったことから自分の身体情報を基盤にしたイメージに特化した視覚認知システムがあり、そのシステムに限局した無視症状というものもありえること、
また半側空間無視症状は皮質下だけの損傷でも起こりうることが述べられています。
視覚情報というのは様々な基準(フレーム)があり、身体感覚というのも視覚情報処理に大事なのだろうなと思いました。
参考URL: Pure Representational Neglect After Right Thalamic Lesion
補足コメント
昔っから球技が苦手で、サッカーやバスケットボールなんかを楽しそうにやっている友だちを見てはなんであんなことができるのか不思議だった。
最近は体の調子をと整える目的であれこれ姿勢を良くするようなエクササイズをしているのだけれども
調子がいいと、ふと視界の印象ががらりと変わる瞬間がある。
これは自分の目でもって世界を見ているという感覚なのだけれども、これは多くの人にとっては普通の感覚なのだろう。
今回取り上げた論文でもないのですが、自分の体を中心とした視覚認知というのがひょっとしたら、きちんと機能していないのかなとおもったりです。