自閉症者は口も見ない?情報の統合と言語理解の関係性
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「自閉症者は口を見る」は正しいか?

目というのはその人の気持ちが現れるところであり、それゆえ目を観ることはコミュニケーションを取る上で非常に重要になりますが、

自閉症者においては目を観ることが苦手であり、それゆえ会話のときには目でなく口のあたりを見る事が多いということが言われています。

また自閉症者においては心を読み取る能力が十分でないのに加えて、音声言語の処理が苦手であることも報告されており、特に電話での聞き取りなどが苦手なケースが多いことが知られています。

通常私達は音声言語の処理において耳だけでなく目も使っていることが様々な実験から報告されています。

有名なものとしてはマガーク効果というものがあり、「ガ(ga)」と言っている映像に、「バ(ba)」と言っている音声を組み合わせて視聴すると、「ガ」でも「バ」でもなく、「ダ(da)」と聞こえるという現象があります。

参考URL:マガーク効果

このことからも音声言語の処理というのは単に音響を処理するだけでなく、様々な情報を統合することが必要になってくると思うのですが、

自閉症者は聞き取りづらい音声を聞こうとするときには視線はどこをむいているのでしょうか。

聞き取りづらい音声を聞くときの自閉症者の視線とは?

今日取り上げる論文は、自閉症者が聞き取りづらい音声を聞き取ろうとしているときに視線がどこを向いているかについて調べたものです。

この研究では、高機能自閉症スペクトラム障害である少年少女30名(男性28名、平均年齢11歳10ヶ月)とその健常発達対照群30名(男性25名、平均年齢12歳5ヶ月)を対象に

視覚情報と聴覚情報を編集して時間的に少しずらしたものを提示して、その時の視線がどこを向いているかについて調べています。

具体的には、下に示すように画面を分割して、目、口、顔面上部、顔面下部、顔面以外の5つに分けて、視線がどこをどれくらい向いているかについて調べています。

結果を述べると、高機能自閉症スペクトラム障害の少年少女は、聞き取りづらい設定では目でもなく、口でもなく、顔以外の領域に視線をより多くむけていたことが示されています。

自閉症者は口を見るという従来の報告とは異なった結果となった理由として

音声処理では多くの情報を統合する必要があるが、自閉症者においては情報統合能力が低く、それゆえ情報を聴覚に絞り込み、脳の限られたリソースを有効に使うために、視線を顔面からあえて外したのではないかということが述べられています。

たしかに私自身、込み入った話や難しい話、大事な話では視線を顔面から外すような気もして、

こういうのは脳の最適化方略なのかなと思ったり、

あるいはこの例に限らず、患者や同僚、友人の腑に落ちない行動があったとしても、それはそれで彼ら彼女らなりの最適化方略なのかなと思いました。

参考URL:“Look who’s talking!” Gaze patterns for implicit and explicit audio-visual speech synchrony detection in children with high-functioning autism

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