
経時的な空間的位置に対する注意を維持する際の右後頭頂皮質の役割
半側空間無視は複雑な病態で、その発症に関わる脳領域も様々ですが、
その中でも右の後部頭頂葉が重要であるという説があります。
この後部頭頂葉というのは上頭頂小葉と下頭頂小葉に分けられ、
前者はオンラインでの視覚ー行動制御に関わり、後者は行動理解と空間認識に関与しているともされています。
このように視覚情報と行動、認知をつなぎ合わせる役割のある後部頭頂葉ですが、この本質的な役割とはどのようなものなのでしょうか。
今日取り上げる論文は、右後部頭頂葉損傷によって注意力の低下を示した患者を対象に実験を行ったものです。
視覚的認知課題を様々な設定で行っているのですが、
結果を述べると、右後部頭頂葉の損傷で、持続的注意能力と空間認知能力が損なわれることが示されています。
持続的注意能力というのは数分以上に渡って注意を持続する能力なのですが、右後部頭頂葉を損傷した患者は空間認知課題を最初の数分は健常者同様にこなせるものの、その後成績が低下すること、
また意味的な情報よりも空間的な情報に対する認知機能が低下していたことが示されています。
慣れ親しんだ環境ではこういった持続的注意能力の低下や空間認知能力の低下はあまり問題にならなさそうですが、
外に出かける程度の能力のある患者さんについては、歩くにしろ自転車に乗るにしろ、なんらかの実地的な評価が大事なのかなと思いました。
参考URL :Role of right posterior parietal cortex in maintaining attention to spatial locations over time
【要旨】
ヒト後頭頂皮質(PPC)の最近のモデルは、空間知覚、視覚運動制御、または注意の誘導におけるその役割を様々に強調している。しかしながら、神経画像および病変の研究からも、右側PPCが警告状態の維持において特別な役割を果たす可能性が示唆されている。これまで、半空間無視の右半球患者の評価では、警戒作業に重大な全体的障害があることが明らかにされてきたが、現在までのところ、注意力を維持するうえで障害の重要な指標であると考えられる、経時的な能力の低下-警戒能力の低下-の実証はない。さらに、無視における持続的な注意欠陥は、PPC病変と特異的には関連しておらず、この症候群における空間的障害と相互作用するかどうかは依然として不明である。ここでは、注意力を維持しない右半球の患者の能力を、脳卒中対照者および健常者と比較して検討した。我々は、PPC病変に関連する注意の持続に全体的な欠陥のエビデンスを認めた。これは、中央に提示された刺激を伴う単純な検出作業においても同様であった。2回目の実験では、患者が空間的な位置に注意を向ける必要がある場合にのみ、特に患者を無視すると、警戒が低下することを示したが、言語的なものには注意を払わなかった。頭頂溝と下頭頂葉の間の領域にまたがる右PPCの病変ボクセルは、この能力低下と有意に関連していた。最後に、作業困難に対応した視覚パターンまたは空間位置のいずれかに注意を向ける必要がある作業の能力を比較した。ここでも、警戒心は低下したが、空間情報に注意を向ける必要があった場合に限られた。空間的位置への持続的注意は、正常頭頂機能のモデルおよび半空間的無視の臨床的症候群のモデルに組み込む必要のあるヒトの右側PPCの重要な機能であると結論する。
コメント
上の子供も大きくなって自転車にのってあちこち出歩くようになった。
昨日も子供と一緒に近くまで乗り回したところ、最初の数分は気をつけて走っていたが、その後注意散漫になる様子が見受けられた。
持続的な注意能力の発達過程というのは後部頭頂葉周りの連結性の変化か何かかなと思いました。