一般知能gとはなにか?
「頭の良さ」という概念があります。
当たり前といえば当たり前なのですが、英語の成績が良い人は大概の場合、数学の成績や社会の成績、理科の成績も良かったりしますし、
「一を聞いて十を知る」の例でもないのですが、こういった頭の良い人たちは、学習能力が高く、仕事を割り振っても短時間で高いアウトプットを出せることが多いため、多くの企業では学歴を一つの採用基準としています。
こういった「頭の良さ」を初めて概念として考え出されたのは20世紀初頭で、これは一般知能(general intelligence) gという概念で呼ばれていますが、
はたしてこの一般知能gは生理学的にはどの要素に求めることができるのでしょうか。
一般知能gと脳との関係
今日取り上げる論文は、この一般知能gがどのような要素によって説明可能なのかについて調べた研究を取りまとめた概説になります。
この論文によると、一般知能gとは具体的には情報処理能力であり、それは
・情報処理の速さ
・ワーキングメモリ
・情報のコントロール能力
・学習能力
で示されうるようなものであり、
また一般知能gと関連する生理学的要素として
・脳の大きさ
・大脳皮質の厚さ
・大脳皮質を結んでいる神経線維のボリューム
・前頭前野の体積
・前頭前野の中でも「自己」の感覚と関わる領域である内側前頭前野の体積
・感情と知性をつなぐ領域である前帯状皮質の体積
・前帯状皮質から出ている神経線維のボリューム
・言語に関連する領域である側頭葉から出ている神経線維のボリューム
・左外側前頭前野や前帯状皮質の活動
など様々な知見が示されています。
しかしながらどの指標であっても単独で一般知能gを説明するには至らず、その相関係数も低く、説明できるのはせいぜい25%程度であることであることも示されています。
一般知能gが高ければ必ず成功できるのか?一般知能gと集団的知性との関係
単独では説明できないとはいえ、脳と一般知能gとの関連性は十分にはあるようですが、果たして脳機能によって私達の知能も決まり、それゆえ社会的な成功の程度も決められてしまうのでしょうか?
近年の研究からは必ずしもそうではないことが示されています。
以前にも紹介した概念として集団的知性というものがありますが、
この集団的知性というのは、グループの生産性に関わる要素であり、不思議なことにこの集団的知性というのは構成員の一般知能gとは関係がないこと、むしろ社会性と関連する「心を読み取る能力」との関連性が最も高いことが知られています。
一番良いのは頭も良くて気配りが聞くことでしょうが、「心を読み取る能力」を磨くことも大事なのかなと思いました。
参考URL:Cognitive and Neurobiological Mechanisms of the Law of General Intelligence