自己中心座標系、環境中心座標系、身体中心座標系?
いつもの通勤電車ではなく、どこか遠くへでかける電車、例えば特急電車や新幹線などにぼんやり座って発車を待っていると、
ふと隣の電車が動き出したのを見て、あたかも自分が乗っている電車が動いたかのように錯覚することがあります。
電車でなければ臨床場面で、ベッドサイドで電動ベッドの高さを下げたりすると、ふとベッドが下がっているのではなく自分が上がっているかのように錯覚することもあります。
私達の脳は空間を認知しますが、この認知の仕方というのは自分を世界の中心に置くような認知の仕方(自己中心座標系)もあれば、
街の中心にある教会や、麓から見える山々を中心にするような認知の仕方(環境中心座標系)もあります。
先に示した錯覚は、無意識のうちに隣の新幹線や眼の前に見えるベッドを空間認知の要石としたため生じたものだと思うのですが、果たして空間認知の仕方というのはこの2つだけなのでしょうか。
今日取り上げる論文は、空間認知と脳活動についての総説論文になります。
この論文によると空間認知における座標系は、先に上げた自己中心座標系と環境中心座標だけではなく、身体部位中心座標系というものもあるそうです。
この身体部位中心座標系というのは、一歩前に出した足を中心にして空間を前後左右に捉えるような仕方に関わるようなものなのですが、
飛んでくるボールを取るときに、見上げた右手のグローブを中心にどのへんに飛んでくるかを考えるような(右手中心座標系)もので、
それぞれの座標系特有の脳領域があることも述べられています。
右手左手の区別や東西南北の区別がついたり、あるいはキャッチボールが上手にできたりというのは、それぞれの座標系に対応する脳領域の発達を待って現れるのかなと思いました。
参考URL:Multiple reference frames used by the human brain for spatial perception and memory.
【要旨】
本稿では物品の空間的位置を表象する異なる皮質領域による座標系についての機能的画像研究のレビューを行う。一般的な区別である自己中心座標系よび環境中心座標系だけではなく、後帯状皮質と前頭連合野が、視覚情報や体性感覚情報をもとに身体部位中心座標系の形成に選択的に関わっていることを示す。同様に海馬傍回と脳梁膨大後部皮質が楔前部といった特定領域とともに慣れ親しんだ環境での変化しづらい特徴をもとに環境中心座標系の形成に選択的に関わっていることを示す。またこれらの領域が、ランドマークのような方向付けに関わる知覚的特徴とは関係なく、純粋に知覚的な空間課題において選択的に活動することを示す。この効果は脳梁膨大後部皮質が関係する過程であるランドマークの明示的記憶の回想とは切り離されたものであると考えられる。
コメント
上の子がようやく小学校に上がった。本人は待ちに待っていた小学校だが、実際上がってみるとなかなか大変なようだ。
誰に似たのか、周りに同調して何かをしたり、上手に注意を配分したりというのが得意ではないようで、運動会の練習の時は泣きながら学校に通っていた。
親の立場で初めて小学校の運動会に出かけると、泣きながら練習したという様々な行進は底抜けの明るいポップスで彩られており、どうにも複雑な気分になった。どこかの国の国民広場の政治集会を思い出す。ディストピアといったら言い過ぎだろうか。
制度が国民性を作るのか、国民性が制度を作るのか、
「嫌な国に生まれたな」とボソッと呟くと、隣の妻は「私、良いとも悪いとも感じないけど」と答える。
制度の中で何を得ることがなくても、違和感を感じる感性だけは保たせてあげたいなと思います。