目次
はじめに
サディズムというと言葉が重いですが、多かれ少なかれ私達には他人を虐げることに対する喜びを感じる心があります。小さな子供は残酷に虫を殺すことがありますし、大人になっても他者が苦しむコンテンツは動画などで広く見られていますし、いじめや誹謗中傷、パワハラは数え切れないほど多く起こっています。このような嗜虐性は、英語ではeveryday sadismと呼ばれていますが、今回の記事では、この日常的なサディズムを評価する方法を紹介します。
ASP(The Assessment of Sadistic Personality)
これは日常生活で見られるサディズム傾向を9項目の尺度で評価するものになります。評価方法は「1点:全くあてはまらない」から「5点:非常にあてはまる」の5段階評価になります。また逆転項目は点数を反転させて計算します。
評価項目
- 人を支配していることを自覚させるためにからかったことがある
- 人を押しのけることには飽きたことがない
- 支配するためなら人を傷つけるだろう
- 人をからかうと、その人が動転する様子がおかしい
- 他人をいじめることは興奮させられる
- 友人の前で人を嘲笑することは気持ちいい
- 人がけんかをするのを見ると興奮する
- いらいらさせる人を傷つけたいと思う
- 嫌いな人でも、わざと傷つけることはしない (逆転項目)
平均点
さて、この評価方法ですが、一般人を対象にした調査では、平均点(±標準偏差)は15.41±5.62で、全体のおよそ68%の人は9.79点から21.03点になります(Plouffeら, 2017年)。平均点から全てが説明できるわけではないですが、22点以上であれば、嗜虐性高めといえるのかもしれません。ちなみに私は19点、優しそうだと言われる割にそれほどでもないのだなというのを自覚できました。
ダークトライアドとの関連
またこのサディズム尺度ですが、ショートダークトライアド(SD3)と呼ばれるサイコパス、マキャベリズム、ナルシズムの性格傾向検査と組み合わせて使えることも述べられています。こちらについては、以下の記事にまとめてありますので、興味のある方は覗いてみて下さい。
CAST( Comprehensive Assessment of Sadistic Tendencies )
この評価尺度は日常生活で見られるサディズムについて、身体的サディズム、言語的サディズム、代理的サディズムに分けて評価できるものになります。各項目を1点(全く当てはまらない)から5点(非常に当てはまる)の5段階で回答し、下位尺度の得点の平均値を求めます。逆転項目は点数を反転させて計算します。
評価項目
身体的サディズム
- 人を実際に物理的に傷つけることを楽しむ
- 人をいじめることを楽しむ
- 特定の人を押しのけて通る権利があると思う
- 恐怖を使って他者を支配する
- セックスの際に(あるいはそのふりをして)パートナーを傷つけることを楽しむ
言語的サディズム
- 高校時代、故意に人を傷つけるようなことをした
- 他人のことをからかうジョークをするのが楽しい
- 故意に人を騙して恥をかかせ、それがおかしいと思った
- 人をからかう時、特にその人が自分のしていることに気づいているとさらに面白い
- したくないと思っているくせに、特定のクラスメートをいじめるのが飽きなかった
- 絶対に故意に人を辱めることはない (逆転項目)
代理的サディズム
- ビデオゲームで、リアルな出血表現があるのが好きだ
- 逃げるすべがない格闘技を見るのが楽しい
- YouTubeで人がけんかをする映像を見るのが好きだ
- 残酷なスラッシャー系映画で、好きなシーンを何度もみる
- スポーツには暴力シーンが多すぎる (逆転項目)
- ゲームで悪役になって他のキャラクターをいじめるのが楽しい
- プロのカーレースでは、事故の瞬間が一番楽しみだ
平均点
さて、平均点ですが、一般人を対象にした調査では、身体的サディズムは平均点(±標準偏差)が 1.46±0.66点、言語的サディズムが1.83±0.77点、代理的サディズムが2.32±0.84点、全体では1.91±0.64点になります(Buckels, 2018年)。つまり1.27~2.55点の間におおよそ全体の68%が入ることになります。ちなみに私は身体的サディズムや言語的サディズムは低かったのですが、代理的サディズムがやたらと高く、最終的には合計平均点は1.90点でした。案外自分は不通に嗜虐性があるのだなということを自覚できました。
社会的行動との関係
ちなみにこのCASTによる評価ですが、社会的行動に関して以下の関係があることが示されています。
・CAST平均点が高いほどインターネット上での誹謗中傷行動や荒らし行為が多い。
・ダークトライアド(サイコパス、マキャベリズム、ナルシズム)と相関関係を示し、とりわけサイコパス傾向で顕著。
・いじめの加害経験と相関が高く、中でも言語的サディズムがその傾向が高い。
・CAST平均点が高いほど、他者の痛みを低く感じる、また他者の痛みから喜びを感じる。
・CAST平均点が高いほど他者からネガティブな評価をされやすい。
まとめ
心理的評価法の評価結果には、種類によってばらつきがありますし、平均点で人格判定ができるわけではありません。とはいえ、人間は自分を平均以上に捉えるということも言われています。私自身、自分は嗜虐性が少ない良心的な性格だと思っていたのですが、そんなことがないことが分かりました。自分自身を変えることはできませんが、自分のことを知っていればその行動を変えることはできます。興味のある方は一度採点してみるのもいいのではないでしょうか。
【参考文献】
Buckels, E. E. (2018). The psychology of everyday sadism (Doctoral dissertation, University of British Columbia). http://hdl.handle.net/2429/66574
Plouffe, R. A., Saklofske, D. H., & Smith, M. M. (2017). The Assessment of Sadistic Personality: Preliminary psychometric evidence for a new measure. Personality and Individual Differences, 104, 166–171. https://doi.org/10.1016/j.paid.2016.07.043