共同注意に関わる2つの注意システムとは?
「心をともにする」という言葉がありますが、私達人間は心を分かち合い、理解し合う生き物です。
相手が何を考えているのか、私が相手に何をしてほしいのかを伝えることで社会生活が回っていきますが、これにはどのような仕組みが関わっているのでしょうか。
私達人間が持つ能力は多岐にわたりますが、その中でも顕著なものに共同注意というものがあります。
これは二人で同じ一つのものに気を向ける能力なのですが、
この能力があるおかげで「あっ、ライオンだ!」と誰かが指差すことで生き延びることができますし、
「あれ取って」というように誰かに自分の代わりに何かを撮ってもらうことも可能になります。
しかしながらこの共同注意というのはどのような脳内メカニズムに基づいているのでしょうか?
共同注意の脳内メカニズム
心理学的には共同注意というのは2つの要素に分けられます。
一つは相手に自分が何を欲しているのかを伝えるもので、これはIJA(Initiation of Joint Attention:共同注意の開始)と呼ばれています。
もう一つは相手の視線や仕草から相手の欲求に気づく能力で、これはRJA(Responding to Joint Attention:共同注意への応答)と呼ばれています。
脳機能的にはこれら2つに対応する注意システムが有り、
IJA(共同注意の開始)には前頭前野や前頭眼窩野、前帯状皮質などを含む前方注意システムが関わっており、このシステムは生後一ヶ月くらいから発達を始め、外部の刺激や自分の欲求するものに対して注意を向けられるようになります。
またRJA(共同注意への応答)には感覚統合に関わる頭頂葉後部領域や音声や他者の視線の認知に関わる上側頭領域からなる後方注意システムが関わっており、このシステムの発達は比較的遅く、生後6ヶ月位から徐々に発達を始めていきます。
この2つのシステムは徐々に統合して生後9ヶ月くらいから徐々に他者が注意しているものに自分も注意することができ、共同注意というものが完成します。
一緒に絵本を読んだり一緒におもちゃで遊ぶというのは、子育てをしていて時に面倒だなと思うことがありますが、共同注意能力の発達という点では大事なことなんだろうなと思いました。
参考URL:Attention, Joint Attention, and Social Cognition
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