プッシャー症候群の自然経過と運動及び機能回復との関係
脳卒中になると単に手足がうまく動かなくなるだけでなく、まっすぐ座れない、まっすぐ立てないという症状が頻繁に現れます。
こういった症状はプッシャー症候群とも言われることがありますが、この症状はどれくらいの頻度で現れ、どのくらいの割合で改善していくのでしょうか。
今日取り上げる論文は、このプッシャー症候群についてその自然経過と機能回復の関係について調べたものです。
対象となったのは片麻痺の症状を示した脳卒中患者65名で、これらを対象に発症10日以内、6週目、3ヶ月目に臨床評価を行っています。
結果を述べると、プッシャー症候群用の評価スケールを用いると、発症初期には全体の63%に何らかのプッシャー症状が見られること、
また発症初期にプッシャー症状を示した患者のうち、21%は3ヶ月目でも持続していたこと、
機能的回復や入院期間もプッシャー症状があることで予後不良であること、
また右半球損傷も予後不良因子になることが述べられています。
加えてリハビリテーションの現場では従来の視覚を用いた治療よりも実際に立ったり歩かせたりする治療のほうが発症機序から考えても有効なのではないかという提言がなされています。
プッシャー症候群というのは半側空間無視と並んで予後を考える上で重要なのかなと思いました。
ポイント
本研究では、中等度から重度の不全片麻痺の脳卒中患者のプッシャー症状を同定し、症状、障害の程度、および機能的自立性の縦断的変化を検討した。
片麻痺脳卒中患者(n=65)を対象にした臨床評価を、発症後10日以内、6週目、および3ヵ月目に実施した。
結果 、 脳卒中の1週間後に、患者の63%がプッシャー症状の特徴を示した。プッシャーの62%では、症状は6週間で消失したが、21%では、プッシング症状は3カ月で持続した。
3か月での運動回復および機能的能力は、非プッシャーと比較してプッシャーで有意に低く、プッシャー群では入院期間も有意に長かった(89日対57日)。
参考URL:
Poststroke “pushing”: natural history and relationship to motor and functional recovery.
補足コメント
3人目の子供が生まれてもうすぐ4ヶ月、最近寝返りをうてるようになった。
夕方自宅に帰ってくると、夕ご飯を作っている間手をかけられないのか、ゆりかごの中にバンドで拘束されて泣いている。
バンドを外し、布団の上に乗せるとこれまた笑顔で最近覚えた寝返りをうつ。
腹ばいになってバタフライのように体全体を伸展させてしばらくバタバタしていると、やがて疲れて再度泣き出す。
仰向けに戻すと懲りずに寝返りをうちエンドレスでこれがリプレイされる。
痛い目にあうと分かっていても、我が身を動かさずにはいられない、冒険をせずにはいられない、あるいは痛みを欲にかられてなかなか学習できない人間の性を見るようで興味深いです。