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体の傾きをどのように是正するのか?神経学的知見とリハビリテーションの進め方

脳卒中の片麻痺患者の多くは身体軸の認知に何らかの障害を抱えており、場合によっては座ったり立ったりすることもままならないことがありますが、こういった症状はプッシャー症候群とも言われています。

このプッシャー症候群は脳科学的にはどのような脳領域の損傷と考えられているのでしょうか。また基本的な治療法略とはどのようなものなのでしょうか。

今日取り上げる論文は、プッシャー症候群についての総説論文になります。

この論文によると、過去に23名のプッシャー症候群を示した患者の神経画像所見からは視床の後外側核が損傷領域として重複していることが示されていること、

またこの神経核は一次体性感覚皮質や二次体性感覚皮質、後部頭頂皮質、島皮質と連結していること、

視覚情報と体性感覚情報のミスマッチが重要な原因であること、

基本的な治療戦略は

・患者に傾いていることを自覚させる

・窓枠や柱など垂直を示す手がかりを患者の周囲に示して、視覚的な援助をする

・どうすれば体が垂直になるかを学習させる

・歩行練習など、安静立位以外の運動を行っているときもどうすれば体を垂直に保てるかを学習させる

ということが述べられています。

いずれにせよ、適切な刺激を与えてそれに対する妥当なリアクションを引き出し、再学習を図るということなのかなと思いました。

 

ポイント

プッシャー症候群と関連する脳損傷領域は後外側視床である可能性が高い。

またこの神経核と接続する一次体性感覚皮質、二次体性感覚皮質、上頭頂小葉、下頭頂小葉、島皮質も重要である。

基本的な治療戦略は、患者に傾いていることを自覚させ、視覚的手がかりで体が垂直になるポジションを提示し、体が垂直になるような運動を学習し、他の運動を行っているときも垂直姿勢を保つことを学習することである。

 

補足コメント

他にも高次脳機能障害との関連についても触れられていて

半側空間無視や失語がある場合、発症しやすいのではと臨床上感じることが多いのですが、この面については統計学上は有意差がないことなども示されています。

とはいえ、臨床的で暗黙的な認識をエビデンスに落とし込むのは難しいなと思ったりもします。

治療だけでなく、私達の認識は多分に暗黙的な知識に支えられています。

暗黙的な知識というのはうまく言葉に出来ないけど、よくなりそうだとか危なさそうだとか、これはまずいぞというような感覚で

おそらく数十の変数が状況により異なる重み付けをされて、言語化するには非常に複雑な計算で下されるような認知過程が暗黙知だと思うのですが、

これをいくつかのパラメータで示そうとする科学的方法論にはやはり無理がありそうな気もします。

こういうことをいうと身もふたもないのですが、経験とセンスが一番大事なのかなと思ったりです。

 

 

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