入院リハビリテーションにおける患者の脳卒中後の反対側のプッシャー症状を改善するための立位フレームの有用性
脳卒中患者のリハビリテーションで体軸が傾き座位や立位が上手に取れなく難渋することはよくあると思うのですが、
こういった症状に対するアプローチとして受動的立位を取らせるというものがあります。
この方法が有効という研究はケーススタディを含めいくつかあるのですが、
実際にランダムに立位保持介入を治療として行うか行わないかを割り振って比べた場合、その結果はどの様になるのでしょうか。
今日取り上げる論文は、プッシャー症候群を示す患者を対象に受動的立位を取らせるアプローチの介入効果を検討したものです。
対象になったのは、75例(女性37例)で平均年齢は74歳、発症からの日数は平均12.3日のプッシャー症候群を示した脳卒中患者ですが、
これらを対象に3週間の間、通常の理学療法を行うものと、通常の理学療法に加えて一日20分もしくは40分の受動的立位練習を行うものにランダムに割り振り、
3週間後の運動機能や生活上の自律性などについて評価を行っています。
結果を述べると通常の理学療法に付加的に受動的立位練習を行っても改善幅に大きな違いは見られなかったことが示されています。
とはいえ急性期を対象にした研究であり、回復期や慢性期ではどのような結果になるのかなと思いました。
ポイント
プッシャー症候群に対するアプローチとして器械を用いて受動的立位を取らせる方法がある。
今回プッシャー症候群を示す患者を対象にランダム化比較試験を行い、その効果を検証した。
結果、通常の理学療法に受動的立位を取らせる介入を加えても運動機能や自律性の改善幅に有意差は見られなかった。
補足コメント
人工知能のことを調べているとどうしても意識とはなにかという話に突き当たり、
意識に関わる議論のあれこれを調べていると必ず突き当たるものに「中国語の部屋」というものがある。
これはある部屋の中にアルファベットしかわからない英国人がいて、中国語と完全に対応した辞書をもっている。
彼は中国語は全くわからないがマニュアル道理に対応すれば、とりあえず中国語がわかるようには見える。
脳卒中の患者さんの治療を行う。
実際に脳卒中になったことはないので、目視や触診で状態を判断して治療をおこなうが、
実際に患者が何を感じているのかは決してわからない。
脳卒中になったことがあれば少しは想像できるかもしれないが、そういったセラピストはおそらく数えるくらいしかいないだろう。
この点ではほぼすべてのセラピストは中国語を全く理解していない英国人と一緒だろう。
このことは治療に限ったことではなく、自分以外の他者とコミュニケーションを取ることの本質にも言えることだろう。
壁の外には巨人がいる異世界が広がるという話でもないのですが、
主観という超えがたい壁を超えた外には何があるんだろうと思ったりです。