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半側空間無視における受動的注意、能動的注意、身体的無視

臨床現場で頻繁に遭遇する半側空間無視ですが、この発症機序はなかなか複雑で細かく見ると同じ半側空間無視でも様々な亜型があると感じることは多いのではないでしょうか。

この半側空間無視の本態と考えられているものに注意機能の障害というものがあります。

一般に注意機能には二通りあり、

一つは受動的注意であえて意識することなくハッと気づくような注意機能です。

もう一つは能動的注意で、これは意識して何かを探索するようなときに働くような注意機能です。

前者は蛇や蜘蛛、素敵な異性、何らかの変化というものを迅速にキャッチするような注意機能で、後者は駅で待ち合わせ相手を探すような注意機能になるのですが、

半側空間無視ではこの2つの注意機能のいずれか、あるいは両方がうまく働いておらず半側(多くの場合は左側)を十分に認識できなくなる症状が出てきます。

またこれらの注意とは別に、からだの感覚をうまく認識できないケースもあります。麻痺した方の手足に触っても動かしても感覚鈍麻の分を差し引いて考えても反応が鈍すぎるようなケースです。

半側空間無視患者は上記の3つのケースが混在していることが多いと思うのですが、今日取り上げる論文は、具体的にこれらの無視症状の亜型について評価したものです。

対象になったのは右半球損傷で半側空間無視を示した急性期の患者21名で、パソコンの画面上に示された刺激に反応する課題を用いてどの亜型に当てはまるかについて経時的に調べています。

具体的には、以下の添付図に示すような画像を見せるのですが

左側の課題は能動的注意を調べる課題で横に3つ並んだ点の中央に右か左かの矢印が出て、これに反応してキーを押す課題です。

右側の課題は受動的注意を調べる課題で横に3つ並んだ点の左右いずれかに矢印が出るので、どちらの側に矢印が出たかに反応してキーを押す課題です。

さらに身体的な無視を示す亜型を調べる課題として患者にふわふわとした綿のようなものを6個上肢体幹に取り付け、どれくらいの数に気づいて取り外せるかを評価するものです。

結果を述べると同じ右半球損傷による半側空間無視でもある程度亜型別に分けられることが示されています。

半側空間無視というのは一概にくくれないのだろうなと思いました。

参考URL:Inconsistency of performance on neglect subtype tests following acute right hemisphere stroke.

【要旨】

半空間無視は、分離可能で潜在的に臨床的に関連性のあるサブタイプを有するものとして概念化されてきた。しかしながら、無視症状のサブタイプ尺度に対する患者の成績が時間の経過と共に一定しているかどうかという問題については明らかにされていない。本研究では急性右半球脳卒中による無視症状を有する21名の患者における運動、知覚、および個人的な無視の尺度に関するパフォーマンスの経時変化を調査した。患者は、側方標的テスト、側方反応テスト、および修正毛羽テストを使用して、少なくとも1週間の間隔を空けて3回評価された。 3つの検査時点で、18人(85.7%)の患者が少なくとも1回はサブタイプの行動パターンに変化が見られた。これらの患者のうち13人(61.9%)において、時点間の不一致は回復によって十分に説明されなかった。最初の検査で、7人の患者(33.3%)が1つ以上の無視のサブタイプ症状を示した。 3番目の検査時点では、どの患者も複数の症状を示さなかった。急性期においては、無視できる症状の3つの尺度での成績は時期によって一致していなかった。ただし、無視サブタイプの症状の分布は、時間の経過とともにより離散的になるようである。これらの知見は、病態生理学および無視サブタイプの潜在的な予後的価値についての我々の理解を複雑にし、そして単一の時点で評価されたサブタイプ性能に基づく治療決定は限られた有用性であり得ることを示唆する。

 

 

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