注意における2つのシステムとは?
注意という言葉は頻繁に使いますが、それが何かと言われるとなかなか上手に説明できる人はいないのではないかと思います。
というのも注意というのは、一つのものにジッと集中して凝視するようなタイプの注意もありますし、
あるいはふと車を運転していて飛び出してきた子供やボールに気づくといった、外から来た刺激に反応するような注意があります。
前者だけだといわゆる過集中で、周りが見えないという状態になりますし、
後者だけではいわゆる注意散漫と言われる状態になり、
この2つが上手くバランスが取れて相互に切り替えができることで、自他ともにストレス少なく生活することができるようになりますが、脳の中ではこの2つというのはどのような仕組みになっているのでしょうか。
今日取り上げる論文は、この2つの注意システムについて様々なエビデンスを紹介したレビュー論文になります。
この論文によると、何かに集中したり、大事なものを意識的に見つけ出すような注意機能は、頭頂間溝や前頭眼野を含んだネットワークであり、
道路に飛び出してくる子供のように意図していなかったけど大事な情報をキャッチするような注意機能は側頭頭頂接合部や腹側前頭前野を含んだネットワークであり、このネットワークは右半球に大きく偏っていること
また後者のネットワークが、ともすれば過集中になる前者のネットワークをサーキットブレーカーのように遮断して、注意の切り替えに関わることが述べられています。
半側空間無視ではこの2つの注意システムが共にうまく働かないことも述べられており、
半側空間無視の病態の本体はやはり注意障害なのかなと思いました。
参考URL:Control of goal-directed and stimulus-driven attention in the brain.
【要旨】
本稿では私達の注意機能の異なる機能の実行に関わる部分的に分離された脳領域からなるネットワークについてのエビデンスのレビューを行う。まずひとつ目のシステムは頭頂間溝や上部前頭葉を含んだものであるが、これはトップダウン的で目標志向的に刺激の選択と反応に関わるものである。またこのシステムは刺激の発見によって調整されるものである。もう一つのシステムは側頭頭頂皮質や下前頭回を含むものであるが、右に大きく偏っており、トップダウン的な刺激の選択にはかかわらない。そのかわり、このシステムは行動に関連する刺激の発見することに特化されており、特にそれが顕著であった場合や予期していなかった場合に活動する。この腹側前頭頭頂ネットワークはいわば背側システムに対するサーキットブレーカーとしての働きがあり、顕著な刺激に対して注意を向ける働きがある。この2つのシステムは通常の視覚処理においては相互に作用しあっているが、半側空間無視では、この両方が阻害される。