自発的な脳活動から覗く2つの注意機能
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自発的な脳活動から脳の働きを知ることはできるのか?

一般に注意には大きく分けて2つの種類があることが知られています。

一つはトップダウン的な注意で、これは自分の意志で何かを探すような注意機能で、

もう一つはボトムアップ的な注意機能で、蜘蛛や蛇、死体や美人、怖いボスなどといった生存のために重要な刺激に注意の方向を切り替えるような注意機能なのですが、

この2つの注意機能にはそれぞれ対応する脳の領域があり、

トップダウン的な注意機能には両側の前頭頭頂領域からなる背側注意ネットワーク、

ボトムアップ的な注意機能には右側の下頭頂葉を中心とした腹側注意ネットワークが関係していることが考えられています。

しかしながらこれら2つのネットワークというのは、なにか外部に刺激があったときに繋がりあいできるようなネットワークなのでしょうか、それとも何もしていないときでも繋がり合っているようなネットワークなのでしょうか。

今日取り上げる論文は、何もしていない安静時であっても、これら2つのネットワークが存在するのかどうかについて調べたものです。

実験では10名の被験者を対象に何もしていない安静時の脳活動について機能的MRIを使用して調べているのですが、

結果を述べると安静時であっても両側の背側注意ネットワークと右側の腹側注意ネットワークを切り分けられるような脳活動の関係性が見られたことが示されています。

また前頭前野がこの背側注意ネットワークと腹側注意ネットワークの切り替えポイントとして働いているのではないかということが述べられています。

上図参考URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/core/lw/2.0/html/tileshop_pmc/tileshop_pmc_inline.html?title=Click%20on%20image%20to%20zoom&p=PMC3&id=1502503_zpq0270627400005.jpg

なぜ何もしていない安静時であっても注意に関わるネットワークが示されうる理由として

1 過去の何度も使用した経路は、経験に依存して安静時であってものつながりが強くなるため

2 注意が必要な場面で即座に反応できるように、安静時であっても準備状態的につながりが強くなっているため

3 過去の経験に依存して予期的な活動が起こるため

という仮説が挙げられており、またこの3つの仮説は互いに互いを排除せず同時に成り立ちうるものであることも述べられています。

いずれにしても安静時であっても注意機能に関わる脳内ネットワークは存在しうるということで

注意が鋭敏だったり鈍かったりするのは、何もしていないときの基本的な注意ネットワークの繋がり方にもよるのかなと思いました。

 

参考URL:Spontaneous neuronal activity distinguishes human dorsal and ventral attention systems

健常者を対象にした課題関連画像研究からは、2つの注意システムが人間の脳に存在することが示唆されている:一つはトップダウン方向付けに関与する注意システムでこれは両側の背側注意システムによって構成されており、もう一つは顕著な感覚刺激に反応して注意を向け直すことに関わる右側の腹側注意システムである。問題は、この機能的組成が外部の注意要求に応えてのみ出現するのか、それともより基本的には脳活動の内部のダイナミクスで表されるのかということである。このことを調べるため、課題、刺激、または明示的な注意の要求のない状態での機能的MRIのBOLD信号の自発的な変動の相関関係を調査した。我々は、自発的活動のみに基づいて、両側背側注意システムと右外側腹側注意システムを識別する事ができた。さらに、我々は両方のシステム、システム間の機能的相互作用を仲介するための潜在的なメカニズムとして相関を示す前頭前野領域を観察した。これらの知見は、人間の注意の神経解剖学的基質が自発的活動の相関構造に反映されており、外部の事象がなくても持続することを実証するものである。

 

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