恋愛感情の生理学~感情を揺さぶるホルモンの話~
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はじめに

恋に落ちた経験はあるだろうか。胸がドキドキして、つい相手のことばかり考えてしまう。こうした感覚には実はちゃんとした生理学的な理由がある。生理学とは人間の身体の仕組みを研究する学問だ。例えば血圧が上がる理由、お腹が空く理由、そして恋をすると少し冷静でいられなくなる理由まで説明できる。

私たちの身体では、「ホルモン」という物質が感情を調整している。面白いのは、そのホルモンの総量が驚くほど少ないということだ。すべて集めても耳かき一杯に満たない量しかない。そんな微量の物質に振り回されるなんて、人間というのは本当に不思議な生き物だと思う。

それでは、恋愛に関わる代表的なホルモンを見てみよう。

欲望を操るドーパミン

恋愛の初期段階で強く働くのが「ドーパミン」という物質だ。これは「もっと欲しい」という気持ちを強めるホルモンである。

好きな相手からのLINEを待つときや、次にいつ会えるかと考えてしまうときに働いているのが、このドーパミンだ。実はこの仕組みはスマホゲームのガチャやSNSの「いいね」を待つときにも活発になる回路と同じだ。つまり、恋愛もある種の依存状態に近いと言える。

ドーパミンは恋愛だけではなく、美味しいものを食べたいと感じたり、欲しい服を見て買いたくなったりする欲求も引き起こしている。好きな人のことを何度も考えてしまうのは、ドーパミンが脳内で強く働いているからなのだ。だから昔から「恋は盲目」と言われるのだろう。冷静さを失う一方で、それが人生の味わい深さを生んでいることも確かだ。

感情を乱すセロトニン

恋愛中の人はなぜ感情が安定しないのだろうか。ちょっとしたことで喜んだり落ち込んだりするのは、「セロトニン」というホルモンが関係している。

セロトニンは通常、私たちの感情を穏やかにする役割を担っている。温かいお風呂に入っているときや、ゆったりと過ごしているときに感じる落ち着きは、このセロトニンが働いている証拠だ。しかし、恋愛中にはなぜかセロトニンの量が減少してしまう。

セロトニンが不足すると、感情をコントロールするブレーキが効かなくなる。そのため、LINEの返信が遅れるだけで心配になったり、ちょっとした言葉で舞い上がったりするのだ。実際、セロトニンが低下する状態は強迫性障害などの精神疾患の脳内状態とも似ている。恋愛の美しさの裏側に、こうした不安定さが潜んでいるのは興味深い。

緊張と興奮のアドレナリン

好きな人の前で緊張した経験は誰にでもあるだろう。そのときに働いているのが「アドレナリン」というホルモンだ。アドレナリンは本来、危険な状況で分泌され、心拍数や血圧を上げる役割を持つ。

つまり、好きな人を目の前にすると、私たちの身体は緊急事態だと勘違いしてしまうのだ。そのため、心臓が速く打ち、手汗をかき、頭が真っ白になる。しかし面白いことに、私たちはこうした緊張感や興奮をなぜか心地よいと感じてしまう。

ジェットコースターの恐怖と興奮が混ざった感覚に似ている。私たちの祖先は、このアドレナリンによる興奮を「生存に関わる重要なサイン」として認識していたのだろう。恋愛が種の保存に重要な役割を果たしているのは、こうした仕組みのおかげだとも言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おわりに

恋愛が単にホルモンの影響だと知って少しがっかりしたかもしれないが、見方を変えれば、数百万年かけて人間がこれほど繊細な仕組みを発達させたことは、それだけ恋愛や愛という感情が重要だった証だろう。

恋愛中の脳は一時的に異常な状態に陥る。それが人間らしさの一つであると考えると、恋愛という現象がより味わい深く感じられるのではないだろうか。

次回は、情熱が落ち着いたあとにやってくる「穏やかな愛」を支えるホルモンについて解説してみたい。

参考文献

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