老齢および新生世界サルにおける皮質、視床、および視蓋の視覚構造のノルアドレナリン作動性およびセロトニン作動性神経支配
何事にも例外があるといえ、基本的に運動ができるヒトというのは元気な人が多いような気がします。
特にマラソンや短距離走といった孤独な競技と比べて、ボールを使うような競技ではとりわけ元気な人が多いと思うのですが、
こういった傾向は神経生理学的にどのように解釈することができるのでしょうか。
今日取り上げる論文は、サルを対象に神経伝達物質と神経経路の関係について調べたものです。
脳内の情報伝達というのは電気と物質の二本立てになっていて、
電気が直接通り抜けられない神経と神経の間の隙間(シナプス)では神経伝達物質が情報を伝える役割を果たします。
この神経伝達物質には様々なものがあるのですが、その中でもノルアドレナリン性のものとセロトニン性のものがあり、脳の広範な領域の活動を調整しています。
↑セロトニン神経系
↑ノルアドレナリン神経系(参考URL )
今日取り上げる論文は、サルの視覚系を対象にこれらの神経系がどのように関与しているかについて詳しく調べたものです。
染色技術を使って皮質及び皮質下の構造を調べているのですが、
結果を述べるとヒトの視覚経路を構成する腹側視覚経路(カタチの認識)と背側視覚経路(対象の空間情報を認識し、運動につなげる(飛んでくるボールに手を伸ばすなど))のうち、
ノルアドレナリン神経系は背側視覚経路に関わっていることが示されています。
ノルアドレナリンは興奮性、セロトニンは抑制性に働きますが、
元気な人が運動が得意だったり、テンションが上がると運動のキレがよくなるのも何かしらこういった仕組みが関係しているのかなと思いました。
ポイント
脳はノルアドレナリン作動性の経路とセロトニン作動性の経路がある。
サルの皮質および皮質下組織を対象に染色技術を使ってノルアドレナリン/セロトニン作動性の経路の違いについて調査した。
結果、視覚的運動に関わる背側視覚経路はノルアドレナリン作動性となっていた。
補足コメント
物心ついた頃から運動が苦手で手先が不器用だった。
でも最近、あれこれ体の歪みを整えるようなエクササイズをして、身体のポジションが整って、すっと姿勢良く動けるように成るとと不思議な経験をするようになった。
まず視界が一人称的視点からのクリアなものとして感じるようになる。感じとしては大昔のファミコンのダンジョンゲームのように空間のフレームがしっかりして、自分の眼球を中心にまっすぐ世界が広がっているという視覚意識がうまれる(デフォルトの視覚意識は後頭部のあたりから遠近がぼんやりした感じで視覚的意識が広がっている)。
もう一つ面白いのは、目の前に広がる空間情報をもとに、手を自分で操作しているという眼と手を協調させた操作感覚が生じる(これもデフォルトでは体性感覚ベースで手を動かしていて目の情報を手にうまく伝えられていないような気がする)。
おそらくわたしと同じように空間認識と眼と手の協調が特殊なひとというのは案外多いような気がして、
どんな仕組みになっているかはわからないけど、身体からの働きかけで主体感と呼ばれる感覚が変わるような気がし、
この辺は中枢疾患のアプローチにも活かせそうな気がすのですが、どうなんでしょう。