目次
一般的知能とはなにか?
知能というと漠然としているのですが、私達は日々計算したり、予測したり、文章を読んだり様々なことに頭脳を使って生きています。
それなりの得意不得意というものがあるにしろ、一般に知能の高い人というのは計算問題をとかせても、外国語を覚えさせても、あるいは何らかの資格テストにしろ、そうでない人と比べて良い結果を出すことができます。
こういったいわゆる「頭の良さ」は心理学分野では「一般的知能」と呼ばれているのですが、この一般的知能については21世紀初頭である現在、どの程度わかっているのでしょうか。
一般的知能と遺伝
頭の良い親の子供は往々にして成績が良いことから一般的知能と遺伝は何らかの関係がありそうですが、これはどの程度のものなのでしょうか。
双子を対象にした様々な研究からは、年齢が低いうちは一般的知能は環境的な因子の影響が大きいのですが、小学校も高学年になるにつれて遺伝的因子の影響が強まり、一般的知性の半分以上が遺伝で説明可能となること、
さらに中年期には一般的知能のおよそ7割近くが遺伝で説明可能となってしまうことが示されています。
ではどの遺伝子が知能に影響を与えるかという点についてははっきりしたことが分かってはいないのですが、
アルツハイマー病の発症に関連したAPOE遺伝子の特殊なタイプを持っているものは、わずかながら知能が低い傾向が見られ、この傾向は高齢になるにつれ徐々に高まることが示されています。
またどれか一つの遺伝子で一般的知能が決定されるわけではなく、多くの遺伝子の関係性によって決まるのではないかということが考えられています。
興味深いところでは体や顔のシンメトリ(左右同一性)が高い人ほど一般的知能が高くなることが報告されています。
一般的知能と脳
頭でっかちという言葉もありますが、解剖学的研究からは大脳の体積というのは確かに一般的知能と関連し、大脳の体積が大きいほど一般的知能も高くなること、
さらには大脳を連絡する大脳白質繊維の体積や、大脳皮質の厚さ、ワーキングメモリに関係する前頭前野の外側領域の厚さなども一般的知能に関連することが報告されています。
一般的知能と人生
頭が良いほど金持ちになれるかということ、必ずしもそうではないことが様々な研究から報告されています。
一般的知能と学歴、職業、所得の相関関係を調べてみると、それぞれ0.46、0.31、0.21であり、
たしかに一般的知能が高ければ学歴が高くなる傾向はあるももの、それが良い職業に結びつく可能性は少し低くなり、さらにそれが良い所得に結びつくかという点についてはさらに可能性が低くなることが示されています。
しかしながら別の研究では一般的知能が高い人は、人生の選択において合理的判断を下すことができ、様々な場面で考えられうるリスクやメリットを冷静に勘案できることから所得は高くなりやすいとした報告もあります。
また幼少期の一般的知能が低いほど成人してからの心疾患リスクや精神疾患リスクが高くなることが報告されており、寿命が短くなることも示されており、これはアルコールやタバコ、食生活などとの関連によるものではないかということが仮説的に述べられています。
頭が良ければ幸せになれるとは限りませんが、やはり頭が良いほうが生きる上でのメリットがあるのかなと思ったり、
あるいは古代から現在に至る社会制度というのは、多少のゆらぎはありますが、知能が人生に与える影響を少なくしようとする試みなのかなと思いました。
参考URL:Intelligence