ジェスチャーから見る意図に関わる脳活動と伝える意思
私達人間は何かを伝えずにはいられない生き物です。
これがしたい、あれはそうだ、ここに行きたい、様々な意図を相手に伝えることで社会が回り、人生が回っていきます。
このように他者に何かを伝える方法というのはコトバだけでなく、ジェスチャーというものがあります。
身近なものではバイバイや頂戴、あっちいってなど様々なものがありますが、これに関わる脳活動とはどのようなものなのでしょうか。
今日取り上げる論文は、ジェスチャーを実際に行ったり、行っているのを想像しているときにどのような脳活動が起こっているのかについて調べたものです。
実験では被験者にコンピュータスクリーン上に、ジェスチャーを行っている場面を見せ、それを実際に真似をしたり、あるいは行うところをイメージしたりしてもらいます。
このジェスチャーについてですが、二通りのジェスチャーを見せており、
一つは他動詞的ジェスチャーであり、金槌を叩く、ボールを投げる、キャベツを切る、のように、目的語を持つような動詞のジェスチャーで、
もう一つは自動詞的ジェスチャーであり、バイバイや手招きのような目的語を持たないような動詞のジェスチャーになります。
これらの課題を行っている時に脳波測定と光トポグラフィー(NIRS)を使って脳活動の測定をしているのですが、
結果を述べると、実際にジェスチャーを行うにしろ、イメージするだけにしろ、運動の準備に関わる補足運動野の活動が引き起こされていたこと
またジェスチャーの種類を分けて調べてみると、他動詞的ジェスチャーの方が、運動準備に関係する脳波(運動準備電位)がより大きいことが示されています。
同じような運動であっても、道具を使うような運動は細かな運動調整を必要とするため、高い脳活動を引き起こすのかなと思いました。
ポイント
ジェスチャーを実際に行っているときとイメージする時の脳活動について脳波測定とNIRSを用いて測定を行った。
従来の研究と同様に実際にジェスチャーを行うときもイメージだけのときも補足運動野の活動が認められた。
ジェスチャーの種類を他動詞的ジェスチャーと自動詞的ジェスチャーに分けて調べたところ、他動詞的ジェスチャーがより強く運動準備に先立つ脳波である運動準備電位を増大させることが見られた。
参考URL:
補足コメント
コトバとジェスチャーというのはどこまで一緒でどこから違うのかなというのはよく考える。
言葉がなにかというのを調べていると認知意味論というものに当たるのだけれども、
色々読んだ中で分かりやすく面白かったものに「レトリックと人生」という洒落たタイトルの本がある。
その分野の第一人者のジョージ・レイコフによるものなのだが、
見上げるようなイメージが「高さ」という概念を地位の高さや金額の高さに、
「近い」、「遠い」という身体的イメージが人間関係の距離(この人間関係の”距離”という概念も絶妙だけれども)に援用されたり
つまりは身体的感覚がすべてのコトバ(概念)の元になっているという話だ。
そう考えると、子供が両手を広げて大きい様子や高い様子を示すのも「オオキイ」「タカイ」と口を動かして話すもの体をベースにした概念という点ではそんなに変わらないんだろうなと思う。
ヒトが必要以上に大きい家や高いビルに住みたがるのも、これは身体的イメージとしては地位の高さや権力の大きさと直結するからかななどと思いました。