あなたは安心して仕事ができていますか?:安心と信頼が作るチームパフォーマンス
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チームパフォーマンスはどのようにして定式化できるか?

私達人間は戦う生き物です。

なにかに向かって勝ち取りたい、あるいは人よりも優れたいというのは、生物進化の歴史を纏った私達の宿命のようなものであり、

今日も様々なチームがより優れた結果を出そうと凌ぎを削っています。

ひょっとしたらこの記事を読んでいるあなたもチームを引っ張るリーダーであり、どのようにすればチームのパフォーマンスが上がるか頭を悩ましているかもしれませんが、

チームパフォーマンスについては様々な社会心理学的研究がなされ、多くの理論が提出されています。

今日取り上げる論文は、チームパフォーマンスを改善させるためのモデルについての総説論文になります。

I-P-OモデルとIMOIモデルとはなにか?

どのようにすればチームのパフォーマンスが上がるか、あるいはチームパフォーマンスが高いチームは何が違うのかという研究は、研究室での様々な条件が統制された研究から、あるいは仕事の現場に入ってなされたフィールドワーク的な研究まで様々になされてきたのですが、

そのような研究の集積として「I-P-Oモデル」というものがあります。

これはすなわちInput-Process-Outputであり、

適切なインプット、例えば人材や設備、給料、環境、教育を与えれば、一定のプロセスを経て、あるべきアウトプットを促せるという考え方なのですが、最近の研究ではこのようなモデルは必ずしも正しくないのではないかということが言われているそうです。

これは具体的には仕事のアウトプット(うまくいったか、いかなかったか、どのようにうまくいったか)が次の段階でのインプットやプロセスに影響を与えたり、

あるいはインプットとプロセス、プロセスとアウトプットが単純に切り離すことができないことから、その限界性が指摘されているのですが、

この論文では新たなフレームワークとして「IMOI」モデルというものが提唱されています。

これはInput-Mediator-Output-Inputを意味したものなのですが、

略称のIMOIの間にハイフンがないのは仕事の流れというのは連続的なものであることや必ずしも線形の単純な振る舞いとならないことを意味しており、

Mediator(取りなすもの)というのは、具体的には感情や企業文化、雰囲気というものになります。

これは同じインプット(教育、機器、人事制度)を入れても、必ず同じプロセスを経て同じアウトプットにはなりえないことを示しています。

感じの悪い部署では同じインプットを投入しても対して効果が出ないことがあるでしょうし、生き生きとした元気の良い部署では同じインプットを投入しても、予想を上回る効果を得ることもあるでしょう。

その意味で従来の一定不変のプロセスという概念に変わって、感情や文化、雰囲気のような無形のものがアウトプットを左右する重要な変数であるという概念がMediator(取りなすもの)として想定されています。

また最後にIMOIというように、最後にI(Input)があることは、仕事というのは一度きりで終わる実験室での課題と違い連続的なものであり、仕事の成果そのものが次の仕事のInputになりうることを意味しています。

インプットの効果が上がりやすいチームとはどのような背景を持っているのか?

以上に説明したように、チームのパフォーマンスを上げるためにはインプットも大事なのですが、それ以上にチームの文化や雰囲気といった心理学的要因がアウトプットに影響を与えることが考えられています。

では、はたしてどのような文化や雰囲気というものが大事になってくるのでしょうか。

この論文では、チームの中での安心感とチームに対する信頼感がアウトプットに重要な影響を与えることが述べられています。

これは具体的には、チームの中では何を言っても大丈夫という安心感であり、こういった安心感があることで建設的な意見や議論がなされ、より高いアウトプットにつながることや

また「私達はできる」というポジティブな信念があるチームというのは高いアウトプットになりうるということになります。

常に上司や同僚の顔色をうかがわなければいけない雰囲気であったり、

あるいは連戦連敗のチームであったりすると、いくら設備やインセンティブの改善を図ったとしても思うような結果が出ないということで、

肥料をやっても土地が固ければ作物が実らないように、

チームパフォーマンスを上げるには、安心感の醸成や成功体験の積み重ねといった地道な作業が大事なのかなと思ったり、

顧客の満足度を高めることが顧客からの収益を高めるように

従業員の仕事に対する満足度の高低が従業員のパフォーマンスの高低につながるのかなと思いました。

参考URL:Teams in organizations: from input-process-output models to IMOI models.

【要旨】

従来の研究では、研究室を含む他の環境で多くの研究が行われてきたが、本レビューでは通常は組織に組み込まれた長期にわたって存在する作業グループおよびチームに関連する研究および理論について調査を行う。 従来の研究では時間とチームのインプットとアウトカムの間を仲介する説明的なメカニズムの性質に基づく二次元システムを中心に組織されてきた。 これらのメカニズムは、感情的、行動的、認知的、またはこれら3つの何らかの組み合わせであった。 最近の理論的および方法論的な研究は、時間の経過とともに機能する複雑なマルチレベルシステム、チーム、およびコンテキストとしてチームの理解を深めるために議論されている。 経験的研究と理論的研究の両方の状態を、現在の知識と将来の方向性への影響に関して比較を行う。

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