なぜ大脳基底核損傷で半側空間無視が起こってしまうのか?
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機能障害の共通領域を同定するための正規化灌流MRI:大脳基底核を有する無視患者

視覚認識というのは随分複雑な仕組みで出来ていて、それゆえ脳の様々な領域の損傷で半側空間無視というものも引き起こされるのですが、

この半側空間無視は大脳皮質だけではなく、大脳基底核や視床といった皮質下領域の損傷でも引き起こされることが知られています。

しかしながらこれらの皮質下領域が損傷することで、皮質領域にどのような変化が生じているのでしょうか。

今日取り上げる論文は、半側空間無視における大脳基底核の役割について調べたものです。

大脳基底核は大脳皮質と密接につながっており、大脳皮質の活動を調整する働きがあるのですが、

この研究では、右大脳基底核損傷を呈した患者10名を半側空間無視のあるもの5名とないもの5名に分け

大脳皮質のどの領域に血流が流れているかを調べる灌流強調画像法(PWI)を用いて、半側空間無視の有無が皮質への血流とどのような関係があるかについて調べています。

結果を述べると、大脳基底核損傷患者の中でも半側空間無視を呈するものは中心部が損傷されている傾向が高く

またこのような患者は従来大脳皮質の半側空間無視責任領域と考えられてきた上側頭回、下頭頂小葉、下前頭回への血流灌流が変化していることが示されています。

大脳皮質そのものが損傷されていなくとも、そこに接続する皮質下領域の損傷で機能的にダウンすることがあるのかなと思いました。

参考URL:Normalized perfusion MRI to identify common areas of dysfunction: patients with basal ganglia neglect.

【要旨】構造的に無傷のままで十分であるが正常に機能するために十分ではない血液供給を受けている脳領域を識別するために、灌流強調画像法(PWI)が使用される。先行研究による観察では、皮質下脳卒中による空間的無視が、皮質下構造自体の神経細胞の喪失を通してではなく、皮質領域の機能不全によって説明され得ることを示唆している。本研究は空間無視患者における大脳基底核脳卒中によって誘発される機能不全皮質領域を識別することを目的とした。大脳基底核を中心とした脳卒中病変を有する患者群において、本発明者らは、PWIマップの空間的正規化および対称ボクセル毎半球間比較を使用することによって、構造的に無傷であるが機能不全の皮質組織の共通領域を調べた。これらの新しい技術は、同じ定位空間における異なる個体の構造的には損なわれているが異常に灌流されている領域の比較を可能にし、同時に局所灌流の違いおよび可能性のある観察者依存バイアスによる問題を回避する。我々は、空間無視を誘発する右大脳基底核を中心とする脳卒中によって、非損傷領域であり先行研究から直接的な損傷から半側空間無視を引き起こすことが報告されている上側頭回、下頭頂小葉、下前頭回の異常な灌流を引き起こすことを発見した。データは、右大脳基底核病変に続く空間的無視が典型的にはこれらの特定の皮質領域(の一部)の機能不全によって引き起こされることを示唆している。

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