ヒトの攻撃性の社会的神経内分泌学
進化の過程というのは戦いの歴史であり、
太古の昔から私達生物は自らの生き残りをかけて暴力の世界を生きてきているのですが、
この暴力、攻撃行動にはヒトでは二種類あることが知られています。
一つは反応的攻撃というもので、これは何か不快な出来事が引き金になり、感情の抑制が効かなくなって攻撃するもので、いわゆる「キレる」という行動に該当します。
もう一つは道具的攻撃というもので、これはなにか目的を達成するために冷静に暴力を用いるようなもので、
お金が欲しいからカツアゲをする、地位が欲しいから威嚇的に振る舞う、異性を支配する道具として暴力を用いるといった行動に該当します。
代表的な男性ホルモンの一つであるテストステロンは反応的攻撃に関係することが知られていますが、これはどのような仕組みでヒトを攻撃に駆り立てるのでしょうか。
今日取り上げる論文は、このテストステロンと反応的攻撃の関係についての総説論文になります。
この論文によると、テストステロンというのは、体内の濃度が高ければキレっぱなしというわけではなく、
置かれた状況によってテストステロンの濃度が変動することが知られています。
例えば同じメスを巡って争い合う場合、縄張りを巡って争い合う場合、地位を巡って争い合う場合など、他の個体と競争的な関係に置かれることで一気にテストステロンの濃度が高まり、これにより反応的攻撃が引き起こされるということなのですが、
テストステロンの上昇によってヒトの攻撃行動を掌る扁桃体の活動が変化し、
これと同時に扁桃体の活動を抑える前頭前野の活動が低下し、様々な威嚇行動(怒り顔の表出、挑発行動)が出現し、最終的に反応的攻撃がなされること、
これらの過程を緩和する要因としては競争の結果(負けるとテストステロンの濃度は低下する)、性別(女性の方が攻撃性が少ない)、遺伝子多型(キレやすい遺伝子がある)、コルチゾール動態(ストレスホルモンであるコルチゾールが攻撃性に影響する)といったものがあることが述べられています。
怒りっぽい人に話しかけるときにはタイミングが大事ですが、これは攻撃性に関わるテストステロンの働きが競争的要因や緩和的要因によってダイナミックに変動することが関係しているのかなと思いました。
参考URL:The social neuroendocrinology of human aggression.
【要旨】
テストステロン濃度は、競合的で攻撃的な相互作用に応じて急速に変動する。このことは、ベースラインの違いではなくテストステロンの変化が現在および/またはその後の競争的で攻撃的な行動を形成することを示唆している。 動物モデルでの近年の研究ではこの仮説を強く支持を結果を示すものの、ヒトを対象にした研究ではテストステロン濃度の変化を競争の相互作用がどのように後押しするのかではなく、これらの変化がどのようにその後の行動に影響するかに主に焦点を合わせられてきた。 本稿では、反応性攻撃の調節におけるテストステロン動態の役割に主な焦点を当ててテストステロンとヒトの攻撃行動に関する文献のレビューを提供する。 我々はまたテストステロンがヒトの攻撃的行動を偏らせうる神経機構について仮説的に推測を行う。 最後に、我々は将来の研究で取り組まれるべき重要な質問を強調することによって結論を下す。
コメント
心と体をもうちょっと強くしたいと思ってだいぶ前に筋トレをはじめました。
10年遅れでビリーズブートキャンプをやっているうちは調子よく、体に筋肉も乗って体調もノリノリだったのですが、
内容的に有酸素運動が多く時間が随分取られることもあり、
自重トレーニングによる無酸素的な筋力強化練習のみに切り替えたところ、
たしかにメンタルも強くなり、筋肉も太くなったのですがやたらと風邪を引きやすくなり、最後には風邪を引き金とした喘息症状を示して筋トレ中止となりました(*_*)
筋トレすることでテストステロンが放出され、男らしいアグレッシブなメンタルになるにはなるのですが、
このテストステロンというのは両刃の剣で免疫機能とトレードオフになっているそうです(それゆえマッチョな体型というのは酒や煙草やテストステロンをガバガバやっても大丈夫なくらい俺の体は強いんだというセックスアピールになりうるのだとか)。
おそらくビリーズブートキャンプをやっていたときには有酸素運動による免疫機能の底上げがうまくテストステロンの毒気を抑えていたのかなという仮説を立て、
出勤時に25分のジョグと自重筋トレ数セットを組み合わせたサーキットトレーニングを行っているのですが、今の所喘息の具合も良くなりいい感じです。
ひ弱な体に凶々しい欲望を積んで今日も走りたいと思いますm(_ _)m