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背側注意ネットワークと腹側注意ネットワーク

普段私達は「注意」という言葉を頻繁に使いますが、この注意とというのは心理学的には大きく2つの種類に分けることが出来ます。

一つはトップダウン的注意というもので、これは「ウォーリーを探せ」のように、自分の目を動かして何かを能動的に探すような注意に当たり、

もう一つはボトムアップ的注意というもので、これは意識せずにも何らかの著名な刺激(街中から流れるラーメンの匂い、素敵な異性、蛇やムカデ)が視界に入ると自動的にそこに注意が向いてしまうような受動的な注意になります。

脳の中にはこれらの注意に対応するネットワークがあることが知られており、

背側注意ネットワークはトップダウン的注意に、腹側注意ネットワークはボトムアップ的注意に関わることが様々な研究から示されています。

この腹側注意ネットワークの中核領域の一つに右の側頭頭頂接合部があります(図の赤色部分;この図は左半球ではありますが)。

今日取り上げる論文は、トップダウン的注意とボトムアップ的注意に関わる脳活動について詳しく調べたものになります。

実験ではこの2つの注意を駆動するような刺激を提示して、このときの脳活動を機能的MRIを用いて調べているのですが、

側頭頭頂接合部は何か顕著な刺激であれば何でも反応するというわけではなく、課題に関連した刺激が現れた時にだけ活動が有意に変化することが示されています。

つまりこれはもぐらたたきをしているような時には

側頭頭頂接合部は出てきたモグラを顕著な刺激としてボトムアップ的に反応しますが、

これは背景の雲や木の色や形が変わるような刺激には反応しないということで、

予め行動に紐付けられた刺激が出てくれば反応するけど、行動に関係しないような刺激には反応しないということになります。

何かに気づくためには刺激が行動と紐付けられる必要があるのかなと思ったり、

こういうのは半側空間無視患者に対する行動課題の設定に使えるのかなと思いました。

 

参考URL:An event-related functional magnetic resonance imaging study of voluntary and stimulus-driven orienting of attention.

【要旨】

注意には自発的に向けられものと、あるいは自動的に著名な刺激に向かって向けられるものがある。今回我々はヒトを対象にBOLD信号を用いて空間的注意の自発的な変更と刺激駆動による変更の違いについて調査した。自発的な注意の変更は、刺激に駆動される注意と比べて背側前頭頭頂ネットワークの中核領域である前頭眼野と頭頂間溝の準備段階での高い活動を示し、このことからこれらの領域は自発的な注意のコントロールにおいて特別な役割があることが示唆された。刺激駆動形の注意の変更は、色情報に敏感で前頭眼野が含まれる背側ネットワークの一部である後頭側頭領域の活動を引き起こし、このことから内発的な方向付けと外発的な方向付けに関わるシステムが一部重複していることが示唆された。右の側頭頭頂接合部(TPJ)は腹側前頭頭頂注意ネットワークの一部であるが、これは行動課題に関連した刺激が、注意が向けられていない場所に出現するような時に大きく活動が調整された。しかしながらTPJは課題とは関連しない色刺激については反応せず、このことからTPJは行動に関連した刺激によって駆動されることが示唆された。最後に、腹側領域も背側領域も方向付けが再度行われる時に調整されていたが、これは自発的に方向づけが再度行われた時に限られており、このことから期待と感覚入力のミスマッチの重要性が示唆された。

 

コメント

何かにボトムアップ的に気づくというのは得意な人は息をするように何でもないのだろうけれども、

苦手な人は水中の中で息を止めるかのように努力を要することで

気づこう、気づこうとプアな脳内リソースを全開全力で使って全方位的に気を張っていると、

一日が終わる頃には気力も体力も尽きていたりします。

これとは対照的にトップダウンで仕事ができるような読み仕事や書き仕事、話し仕事というのはいくらやってもあんまり疲れず、むしろやればやるほど元気になったりします。

この厄介な自分の遺伝子がどこから来て、これを背負い込んだ自分の先祖たちはどうやって生き延びてきたのかと思ったりするのですが、

ここ1万年くらいの人類の歴史の中で、ここまでたどり着いたということはそれなりに使いみちがあったからかなと思ったり、

進化論における適者生存というのは、絶対的なドグマではなく、

動物は自分の遺伝子が適する場所へ移動する能力を持ち、

人は自分の遺伝子が適する社会へ移動する知能を持ち、

それぞれがそれぞれに自分の個体が環境にフィットするように移動が可能なところに、まだ救いがあるなと思ったり、

自然であれ、社会であれ、または企業であれ、多様性を持ったシステムが頑強なのは、変わった遺伝子でもその持ち味を活かせる場所が多くあるゆえなのかなと思ったりしました。

まあ、あと何十年か生き延びようかと思います。

 

 

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