空間的な左右差とは関係のない注意症状と半側空間無視の関係とは?
半側空間無視というのは多くの場合左側の無視症状として現れ、日常生活全般に大きない影響を与えます。
それゆえ臨床的な検査にしても、その考察にしても、いかに注意が左側へ偏っているかというところへ着目しがちなのですが、
果たして半側空間無視というのは単に空間的注意の偏りという文脈だけで説明できるものなのでしょうか。
今日取り上げる論文は、空間的偏りとは異なる注意障害がいかに半側空間無視に影響を当たるかについて検討を行った研究のレビュー論文になります。
この論文によると、半側空間無視患者に見られる空間的な偏り(左方向への認識が乏しい)に関係した注意とは別に、様々な注意障害が併発していることが示されています。
具体的には
・注意の瞬きにおける時間的注意配分能力の低下
・視覚、聴覚、触覚における持続的注意能力の低下
・顕著な刺激を検出する能力の低下
・右側へのサッケード性の空間ワーキングメモリの低下(一度見た右側の対象物へ何度も目を向けてしまう症状)
があり、
これらの症状というのは直接左側へ注意が向かないという症状とは別物であるにもかかわらず、半側空間無視の重症度に大きく関連してくること、
またこれらの症状の改善と半側空間無視の改善が並行して起こること、
それゆえこれらの注意障害へのアプローチも半側空間無視の改善を促す上で大事ではないかということが述べられています。
半側空間無視というのは随分と複雑なのだなと思いました。
参考URL:Non-spatially lateralized mechanisms in hemispatial neglect
【要旨】
半空間的無視は、脳の損傷、最も頻繁には脳卒中に起因する一般的な障害である。 無視症状を持つ患者に関する研究によって、注意を向け、空間を表現し、動きを制御することに関わる正常な脳のメカニズムついての重要な知見が明らかにされてきた。 多くの研究が無視の側性性に集中しているが、最近の調査はまた空間的に側性性のない注意症状を明らかにしており、これらの結果は従来の機能的イメージング、ヒトの神経心理学的研究およびサルの電気生理学的研究からの新しい発見と一致するものである。 ここで我々は空間的側性性をもつメカニズムと側性性を持たないメカニズム間の相互作用を理解することが無視症状と一般的な脳構造の正常な機能への重要な洞察を提供し、そして状態の治療法の開発に貢献するものと考える。