スモールワールド性と脳内の情報処理
「世界は狭い」という言葉があります。
これは初めてあった人との間に共通の友人がいたりして驚くことがありますが、
ある研究によると、知り合いの知り合いをたどっていくと、平均6回で、それがアメリカの大統領だろうとナミビアの漁師であろうと繋がりうることが報告されています。
世界の人口は70億人とも言われていますが、はたしてどういった仕組みで
6回で70億の中のだれかと繋がることができるのでしょうか?
スモールワールド性とは?
ヒトとのつながりだとイメージしにくいので、世界の航空ネットワークというものを考えましょう。
航空ネットワークというのは国内線と国際線からできています。
世界中にはおそらく大小数千の空港がありますが、この国内線と国際線を乗り継ぐことでわずか数回の乗り換えで地球の果まで行くことができます。
また全体で見た場合、この国内線というのは一つの小さなネットワークを作っており、この小さなネットワークの中にはいくつか外国に飛ぶような大きな空港があり、こうした大きな空港同士をつないだ大きなネットワークを国際線と見ることもできます。
つまり数回の乗り換えでどこにでもいけるためには条件があり、
1.(国内線のような)小さなネットワークがある
2.その小さなネットワークには中心になるような大きなセンターがある
3.小さなネットワークは大きなセンター同士がつながることで大きなネットワークを構成している
というようなものです。
こういった条件が整っているネットワークはスモールワールド性を持っており、数回のステップで情報が広範囲のどこかに届くことができます。これは現代のSNSの情報拡散を考えると分かりやすいのではないかと思います。
ヒトの脳もスモールワールド性を持っており、小さなネットワーク同士がつながって大きなネットワークが作られており、それゆえ迅速な情報処理が可能であると考えられています。
自閉症スペクトラム障害児の脳内ネットワークはどうなっているのか?
今日取り上げる論文は自閉症スペクトラム障害児の脳内ネットワークがどのようになっているのかについて調べたものです。
実験では平均年齢3.5歳の自閉症スペクトラム障害児12名と定型発達児19名の脳波を測定し、そのつながり具合について調べています。
結果を述べると自閉症スペクトラム障害児ではスモールワールド性が低下していること、
具体的には小さなネットワークの形成と遠距離連絡経路が充分でないため、ある場所とある場所をつなぐためには定型発達児より数多くのステップが必要であることが示唆されています。
スモールワールド性から、ある個体の脳を見るというのも興味深いなと思いました。
論文URL:
Disrupted functional brain networks in autistic toddlers.