知能とはなにか?スピアマンの知能の2因子説
子供を育てていると、どうしても親の欲が出てきて頭が良くなってくれればいいなと思ったりするのですが、
この頭の良さというのは一体どのようなものなのでしょうか。
確かに学校生活を思い出しても頭のいい人は、国語も算数もどちらも良くできましたし、
実際頭のいい人というのは、理解も飲み込みも早く仕事もテキパキとできるイメージがあります。
ではこの知能というのは、どのような概念として捉えることができるのでしょうか。
今日取り上げる論文は知能研究の先駆者であるスピアマンの1904年の古典的研究になります。
この論文ではまず知能研究に関する過去の研究を振り返りながらその方法論的な問題を指摘し、
先行研究が抱えていた問題点を修正する形で、知覚における弁別能力(視覚、聴覚(ピッチ)、重量)や知能(古典、フランス語、国語(英語)、数学、一般常識、音楽)などの相関係数を求め、知能がどのようなものかについての仮説を提示しています。
結果、知能というのは2つの因子で説明できるのではないかという知能の2因子説というものを提示しています。
一つは一般知能因子(g)と呼ばれるもので、英語でも数学でもすべての成績の良さを説明できるようないわゆる「頭の良さ」を説明する因子で、
もう一つは特殊知能因子と呼ばれるもので、音楽や数学などある能力に特有の知能に影響する因子です。
上に添付した図を見てもらえば分かると思うのですが、図の右側は一般知能因子と特殊知能因子の割合について示したもので
これで見ると、古典の成績というのは一般知能因子が99%、特殊知能因子が1%で説明できるのに対し
音楽については一般知能因子が49%、特殊知能因子が51%で説明でき、
さらに重さの弁別能力については一般知能因子が19%、特殊知能因子が81%で説明されることが示されています。
このように知能というのは中核に一般知能因子があり、それを修飾する形で特殊知能因子が影響を与え、この割合は様々な能力によって異なるというのがスピアマンの知能の2因子説になります。
出典:http://blog-imgs-42.fc2.com/c/l/i/clinicalpsychocommu/201003170932433c3.jpg
これに対しては単純化しすぎるという批判から、その後様々な知能モデルが後続の心理学者から提出されていますが、
彼の厳密な考察と研究方法、心理学に因子分析を用いた最初の研究をした人、さらに統計学の一大進歩をもたらしたいわゆる「スピアマンの順位相関係数」を研究の過程で付随的に開発したとの話を聞くと、やはりすごい人だったんだろうなと思いました。
参考URL:“General Intelligence” Objectively Determined and Measured.
【要旨】
相関関係に基づいて、心理的傾向の間の関係、そして「精神的テスト」とより一般性と関心のある精神的活動の間の関係を決定した。 これまでの研究に対して批判的検討を加え、従来の研究方法では決定的な結果が得られないことを示した。 本研究における実験では、聴覚、視覚、および触覚の感覚的識別を、それぞれ条件付きの3つについて、モノトーン、目盛り付きの一連のカラーカード、および目盛り付きの一連の加重カードを使用してのテストに限定して行われた。 被験者の数を変えて5シリーズの実験を行った。 結果は、知的活動のすべての部門が共通の1つの基本的な機能を持っているのに対し、活動の残りまたは特定の要素は他のすべてのものとはまったく異なることが示唆された。 成人期において、男女間の差は見られなかった。
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