愛の類型論:あなたの愛はどのタイプか?
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はじめに

愛というのはよく聞く言葉ですが、これを具体的に説明しようとするとなかなか難しいものでもあります。愛といっても夫婦愛もあれば友人への愛、動物愛など様々なものがあります。また夫婦の愛の形も人それぞれです。今回の記事ではこれらの愛を説明する理論について簡単にご紹介します。

リーのラブスタイル理論

ジョン・アラン・リーによって1970年代に提唱されたラブスタイル理論は、愛のスタイルを6つのカテゴリーに分類しています。その中核となるのは、エロス、ストルゲ、ルダスで、これらの組み合わせから、アガペ、マニア、プラグマが生じるとしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

最初のスタイルは「エロス」で、情熱的で身体的魅力に基づく愛を表します。このスタイルは外見や身体的魅力を重視し、一目惚れに似た感覚を伴います。情熱的で激しい感情が特徴的で、性的な魅力と満足感を重要視します。

二つ目のスタイルは「ルダス」で、遊び心のある、ゲーム感覚の愛を表します。このスタイルの人は、複数のパートナーと同時に関係を持つことを楽しみ、感情的な深みや拘束を避ける傾向があります。関係を軽く、楽しいものと捉えます。

三つ目のスタイルは「ストルゲ」で、友情に基づく、ゆっくりと発展する愛を表します。このスタイルは友情から始まり、徐々に愛情へと発展します。共通の興味や価値観を重視し、安定した長期的な関係を志向します。

四つ目のスタイルは「プラグマ」で、実用的で条件を重視する愛を表します。このスタイルの人は、パートナーの社会的地位、収入、家族背景などを重視し、関係の実用性や利便性を重要視します。論理的で現実的な態度を取ります。

五つ目のスタイルは「マニア」で、強迫的で感情的な起伏が激しい愛を表します。このスタイルは激しい嫉妬心や独占欲を伴い、パートナーに執着し、常に気持ちを確認したがります。感情のコントロールが難しく、不安定な関係に陥りやすいのが特徴です。

最後のスタイルは「アガペ」で、利他的で無条件の愛を表します。このスタイルの人は、パートナーの幸福を自分の幸福よりも優先し、見返りを求めず、無条件に愛します。献身的で寛容な態度を取ります。

ラブスタイルの評価方法

このLeeの6つの類型を簡便に評価するものもあります。この質問票では、以下の24項目について、まったく同意できないを1点、完全に同意するを5点として5段階評価を行います。

愛態度尺度(LAS; Love Attitudes Scale)

1. パートナーと私は、肉体的な “相性 “が合っている。
2. 恋人と私はお互いに運命の相手だと感じている。
3. 私のパートナーは、私の理想とする肉体美/ハンサムの基準に合っている。
4. パートナーが私のことを知らなくても、傷つくことはないと信じている。
5. パートナーに他の恋人のことを知られないようにしなければならないことがある。
6. 私が他の人としたことのいくつかを知ったら、パートナーは怒るだろう。
7. 私たちの愛は、長い友情から生まれた最高のものです。
8. 私たちの友情は時間をかけて徐々に愛へと融合していった。
9. 私たちの恋愛関係は、良い友情から発展したので、最も満足のいくものだ。
10. 私のパートナーを選ぶ際に考慮したのは、その人が私の家族にどのような影響を与えるかということだった。
11. 私のパートナー選びの重要な要素は、その人が良い親になるかどうかだった。
12. 私のパートナー選びで考慮したことのひとつは、その人が私のキャリアにどう影響するかということだった。
13. パートナーに構ってもらえないと、全身が気持ち悪くなる。
14. パートナーが他の誰かと一緒にいるのではないかと思うと、リラックスできない。
15. パートナーにしばらく無視されると、気を引こうとしてバカなことをすることもある。
16. パートナーを苦しめるくらいなら、自分が苦しむほうがましだ。
17. 自分の幸せよりもパートナーの幸せを優先しなければ、幸せになれない。
18. 自分の望みを犠牲にしてでも、パートナーの望みを叶えたい。
19. パートナーと私は本当に理解し合っている。
20. 私はパートナーや他の多くのパートナーと “愛のゲーム “を楽しんでいる。
21. 私たちの愛は本当に深い友情であり、神秘的でミステリアスな感情ではない。
22. 私はパートナーと付き合う前に、もし私たちに子供ができた場合、相手の遺伝的背景と私の遺伝的背景がどの程度適合するかを考えてみた。
23. パートナーと愛し合って以来、私は他のことに集中できなくなった。
24. パートナーのためなら、どんなことにも耐えられる。

エロス項目;1,2,3,19

ルダス項目;4,5,6,20

ストルゲ項目;7,8,9,21

プラグマ項目;10,11,12,22

マニア項目;13,14,15,23

アガペー項目;16,17,18,24

ちなみに各項目の男女別平均点は以下となります。最近の婚活ではプラグマが際立って高くなるのかなと思うのですが、気になる人は一度評価してみるのも良いかもしれません。

愛タイプ 男性 ( n =444) 女性 ( n =646)
エロス 2.08 1.98
ルーダス 3.42 4.00
ストルゲ 2.76 2.48
プラグマ 3.30 3.00
マニア 2.91 2.88
アガペー 2.27 2.38

愛の三角理論

愛の三角理論は、ロバート・スターンバーグによって提唱されたもので、愛を親密性、情熱、決定/コミットメントの3つの構成要素に分類したものになります。親密性は、愛情関係における親密さ、つながり、絆の感覚を含み、情熱はロマンス、身体的魅力、性的満足につながる欲求を含みます。決定/コミットメントは、短期的には相手を愛することを決定し、長期的にはその愛を維持するためのコミットメントを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

愛の量は、この3つの構成要素の絶対的な強さに依存し、愛の種類はそれらの相対的な強さに依存します。これらの構成要素の組み合わせにより、愛のない状態、好意、夢中な恋、空虚な愛、ロマンティックな愛、仲間愛、むなしい愛、完全な愛の8種類の愛が生まれます。

親密性 情熱 決定/コミットメント
愛のない状態
好意 +
夢中な恋 +
空虚な愛 +
ロマンティックな愛 + +
仲間愛 + +
むなしい愛 + +
完全な愛 + + +

各構成要素には異なる特性があり、時間とともに異なる経過をたどります。親密性は、関係の初期には中程度の水準から始まり、時間とともに高くなります。情熱は、関係の初期に急速に高まりますが、その後は比較的急速に減衰します。決定/コミットメントは、関係が続くにつれて徐々に増加し、最終的には安定した水準に達します。

愛は、1つの三角形だけでなく、現実の三角形と理想の三角形、自己の三角形と他者の三角形、自己認知の三角形と他者認知の三角形など、多くの三角形によって表現されます。これらの三角形間の一致度が高いほど、関係満足度は高くなる傾向があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、愛は行動を通して表現され、愛の3つの構成要素はそれぞれ異なる行動を通して表現されます。

親密性を表現する行動は、内面の感情を伝えることから始まります。自分の思いや感情を率直に相手に伝えることで、心の結びつきを深めることができます。また、相手の幸福を優先し、支援することも親密性を示す重要な行為になります。物質的なものだけでなく、時間や自分自身も惜しみなく相手と共有することで、親密さがより一層高まります。相手の気持ちを理解し、共感することも、親密性を表現する上で欠かせません。さらに、精神的・物質的なサポートを提供することで、相手との絆を強めることができます。

情熱を表現する行動は、身体的な接触を通して示されることが多いです。キスをしたり、ハグをしたり、相手の目を見つめたり、優しく触れたりすることで、愛情を伝えることができます。また、性的な親密さを通して情熱を表現することは、多くの恋愛関係において重要な要素となります。

決定/コミットメントを表現する行動は、相手への忠誠心や献身を示すことから始まります。相手への愛を誓い、浮気をせずに貞操を守ることは、コミットメントの表れです。関係が難しい時期でも、一緒に乗り越えようとする姿勢は、強いコミットメントを示しています。さらに、婚約や結婚といった法的・社会的に認められた形でコミットメントを示すことは、愛する関係を長期的に維持するための重要な行動です。

また、親密性、情熱、決定/コミットメントを表現する行動は、互いに影響し合っています。例えば、親密性を高める行動は、情熱を刺激し、コミットメントを強化することにつながります。

愛の四重奏理論

愛の四重奏理論とは、愛を「魅力」、「結びつき」、「信頼」、「尊重」の4つの要素で説明しようとするものです。

「魅力」は物理的・性的魅力と性格的魅力の2種類があります。物理的魅力には美しさ、富など、性格的魅力には人格、社会的地位、ユーモア、知性などが含まれます。
「結びつき」は愛する人との一体感を生み出すもので、親密さ、友情、思いやりが含まれます。類似性、近接性、親密さ、ポジティブな共有体験によって強化されます。
「信頼」は相手が頼りになると信じることで、親密さ、コミットメント、思いやりに不可欠です。自己開示、ポジティブな相互反応によって育まれます。
「尊重」は相手への思慮、賞賛、高い評価を意味し、親密さ、思いやり、愛着に重要な役割を果たします。

親子愛や恋愛、ブランドへの愛など愛には様々なものがありますが、愛が成り立つには、程度の差こそあれ、この4つのすべてが揃うことが必要だとされています。

これをブランド愛への施策へ応用する場合、以下の心がけが必要なのではないかとも論じられています。これはブランディングのみならず営業などでも大事になるのかなと思いました。

育成・維持のための行動
つながり 1. ブランドの価値観、目標、関心などが、その顧客層と類似しているか、一致するようにする。
2. 顧客に自社製品を知ってもらい、すべての新開発品に精通してもらう。
3. 顧客にできるだけ頻繁にブランドを利用してもらう。
魅力 ブランドや製品の品質、価値、審美性、革新性などが優先されなければならない。
尊重 1. お客様を大切にする。
2. 顧客の心配事と関心に配慮し、それらに対応した行動とサービスを行う。
3. 商品とサービスが革新的で立派なものであり続けるようにする。
信頼 ブランド製品とサービス、および行動や行為が、ブランドに対する顧客の信頼と確信を促進し、強化するようにする。

おわりに

このように愛を説明する理論は様々なものがあります。愛に限らず、何かを適切に行うためには内省することも大事になってきます。一度、自分の愛のカタチを掘り下げてみるのも良いかもしれません。気になる人は自分やパートナーの愛の棚卸しをしてみるのもよいのではないでしょうか。

 

【参考文献】

Lee, J. A. (1977). A typology of styles of loving. Personality and social psychology bulletin3(2), 173-182.

Sternberg, R. J. (1986). A triangular theory of love. Psychological review93(2), 119.

Tobore T. O. (2020). Towards a Comprehensive Theory of Love: The Quadruple Theory. Frontiers in psychology, 11, 862. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.00862

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